光島貴之「さやかに色点字‐中原中也の詩集より」から「あおい そらわ うごかない」(2024年)。「あおい」という3文字を黄、茶、青の色点字で表現している

 人により異なる感覚を共有し、他者の世界を垣間見る。視覚の有無という補助線が引かれた2人展では、芸術のそんな効果に文字通り触れることができる。

 全盲の光島貴之さん(1954年生まれ)と晴眼の今村遼佑さん(82年生まれ)は、ともに京都を拠点とする美術家。鑑賞者が触って楽しめる作品群は、それぞれの固有の経験、あるいは2人の対話から生まれたものだ。

〈感覚の点P〉展

 東京都渋谷公園通りギャラリーで5月11日まで。5月5日を除く月曜と5月7日休館。

 たとえば、光島さんのレリーフのシリーズ「さやかに色点字」は、視力を完全に失った10歳の頃に生じた点字と色の共感覚に基づいている。中原中也の詩集から抜き出した数文字を点字に置き換え、対応する色のボタンとして木片に配置。併せてさまざまな手触りの釘やびょうを打ち込み、視覚と触覚で詩の言葉を表現した。

 「見えないなら触覚に集中す…

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