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九段理江さん=2024年

 作家の九段理江さんが「95%をAIで書いた」という小説「影の雨」を3月下旬発売の雑誌「広告」で発表した。昨年の芥川賞受賞作「東京都同情塔」について「全体の5%ぐらいは生成AIの文章を使っている」と語っていたことから、編集部が逆の発想に基づき「95%を生成AI、残り5%を九段さん」とのルールで執筆を依頼した。

 「影の雨」は4千字ほどの掌編。AIの「私」が人間の感情とは何かについて思いをはせる内容だ。最初と最後の一文を九段さんが書いて方向性を定め、残りは対話型AI「ChatGPT(チャットGPT)」にゆだねた。九段さんは小説の書き方を指導するかのように対話を重ね、両者のやりとりを記録した「プロンプト」は約20万字に。雑誌にはその一部も掲載しており、後日全文公開を予定している。

 「広告」誌は1948年に博報堂が創刊。今号から「さあ、うれしい事件を。」をテーマにリニューアルした。新編集長の山口綱士さんは「雑誌自体が事件を起こす発信源になっていきたいとの思いから、自分の手で書ける九段さんが、AIを使って書くというある種のタブー的な実験としてお願いしました」と話す。

 プロンプトには、AIの能力…

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