(9日、第107回全国高校野球選手権大会1回戦 青森・弘前学院聖愛―福岡・西日本短大付)
ケガでプレーはできない。でも、抜群のリーダーシップで2年生ながら主将を務める選手がいる。青森代表の弘前学院聖愛の主将・田崎光太郎だ。「野球をやめたい」と思ったほどの大ケガを乗り越え、チームを鼓舞している。
「ジュンミ、しっかり捕れよ。びびってんじゃねえぞ」
兵庫県尼崎市内のグラウンドに田崎の声が響いた。落球した一戸淳弥(じゅんみ)へ活を入れる一言。一戸は3年生だが、遠慮はしない。
「グラウンドでは3年生にもタメ口で話します。プライベートでも、ほどよい距離感でやっています」
センスあふれるプレーで1年生から二塁手のレギュラーだった。悲劇が襲ったのは3月。練習中に右ひざをひねった。「パキッ」と音がした。
大丈夫と思ったが、病院での診断は右ひざ前十字靱帯(じんたい)と半月板の損傷。全治は10カ月だった。夏の大会どころか秋の大会にも出られない。「野球を嫌いになりました」
練習に顔を出すと、楽しそうに練習する仲間の姿を見るのがつらかった。「練習に行きたくない」。何度も思った。
助け舟を出したのは原田一範…