今年3月10日、宮城県石巻市の穀町幼稚園。東京芸術大学音楽学部4年生だった栗山かなえさん(22)が「クラリネットをこわしちゃった」と、連結した楽器をばらばらにしながら演奏すると、ホールに集まった園児たちから「えー!」と歓声が上がった。
この日あったのは、音大生や若手の演奏仲間らによる、絵本「おむすびころりん」などの朗読にあわせた管楽器の演奏やリトミックなど約1時間のプログラム。保護者も来場し、親子の笑顔が会場に広がった。
平山和紀園長は、笑顔で演奏に聴き入った。「震災を忘れずに続けてくれるのはありがたい。街並みはきれいになっても復興しきれない気持ちの部分に、寄り添ってくれる感じがある」
栗山さんは、クラリネット奏者の母・前野美千代さん(55)=福岡市博多区=と東日本大震災の被災地で演奏活動を続け、12年になる。今年は石巻市や同県気仙沼市で親子向けのコンサートを開き、3月11日には津波で店主らを失った酒店で追悼演奏をした。
犠牲者と同世代 「自分ごととして伝えていく」
石巻市震災遺構の大川小学校も訪ね、娘を亡くした「大川伝承の会」共同代表の鈴木典行さん(60)から話を聞いた。
津波が一瞬にして子どもたちの命を奪った。校舎のそばには高台があった。
でも、行動しなければ命は助からない。
犠牲になった子たちは自分と…