瀧田咲枝さん=NAGOYA CONNÉCT提供

 若い世代でもがんになると「知る」ことから始めてほしい――。15~39歳のAYA世代のがん患者への理解を広げる「AYA week 2025」に合わせ、愛知県内でも8、9日、大学教員らを中心とした団体が名古屋駅でイベントを開く。

どう接したらいいのか

 活動の中心となっている椙山女学園大学看護学部・助教授の瀧田咲枝さんは、国立がん研究センター中央病院(東京都)で看護師として働く中でAYA世代のがん患者に出会った。骨のがんで打ち込んできた柔道ができなくなると告げられ柔道着を切り刻んでしまった男子高校生。妊娠する力「妊よう性」を治療前に温存するか問われた際に自分の意思を示すことができなかった社会人になったばかりの女性……。

 「AYA世代」という言葉がまだ日本で知られる前で、そうした世代のがん患者とどのように接したらいいか悩んだ。

 海外の事例を参考に、患者の気持ちを知るためのスクリーニングシートを知人とつくったところ、徐々に思いを聞けるようになったという。

 こうした経験をきっかけに、2023年から名古屋市内の商業施設で「AICHI AYA week」を開催する。

「好きなことやめなくていい」

 瀧田さんが看護学を教える学生にもAYA世代でがんがわかった女子学生がいる。女子学生は入学前に大腸がんと分かり、学業と抗がん剤治療の両立に取り組んだ。「周りに自分に似た患者さんがいない。誰に言っても分かってもらえず、大学でも自分一人だけ置いていかれている気分になった」と当時の不安だった気持ちを振り返る。

 家族や恋人に支えられたが、周囲の人の安易な「頑張れ、心配している」といった言葉には傷ついたという。「応援している、という思いを持ってそっとしてもらえる方がありがたい」と、その人の性格に応じた接し方をしてもらいたいと言う。

 父親を膵臓(すいぞう)がんで亡くし、周りの人が病気になったときにいち早く異変に気づきたいと看護師を志すようになった女性は「将来、がんの認定看護師の資格を取りたい。『がん=死ぬ』病気ではないことや、自分の好きなことをやめなくてもいいということをみなさんに知ってもらいたい」。

啓発のトークイベントも

 瀧田さんはAYA世代のがん患者の悩みや人との関わり方は多様だといい、「AYA世代でがんになっても、あきらめなくていいことまであきらめなくていい。手をさしのべられる大人や周りの人が増えるように、まずはAYA世代のがんについて広く知ってもらいたい」と話す。

 イベントは8、9日に名古屋駅新幹線口のエスカセンタープラザで。AYA世代でがんを経験したタレントの原千晶さんらによるトークイベント(9日午後2時)などがある。

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