存在は知っているが、何をやっているかわからない……。伝統芸能と聞くと尻込みしてしまう人の心の扉を、そっと開けてくれるのでは。藤間直三はそんな期待を抱かせる、若手日本舞踊家だ。
日本舞踊を楽しむうえでのハードルを下げるため、自身の発表会では、踊る前に解説を入れる。バレエダンサーとの共演も。着物姿や所作の美しさを見せる。
経歴を見れば、日本舞踊界の「エリート」だ。
1992年生まれ。「芸事を始めると上達する」と言われている6歳の6月6日に、母の師匠、藤間秀三に入門した。
10歳でジュニアコンテストの全国大会グランプリなど受賞を重ね、東京芸術大学を卒業してほどなく師範になった。
小学3年で極真空手を始めたが、もともと運動は苦手だった。クラスでは一番足が遅く、鉄棒の逆上がりができるようになったのは二十歳を過ぎてから。
日本舞踊も空手も、厳しい稽古を重ねた。幼い頃に誓った「日本舞踊の先生になる」という夢を実現すると、大学に入学する頃には決めていた。
空手の稽古で足を骨折し、しばらく正座できなかった時も。努力が実り、大学時代に世界大会(70キロ以下級)で4位に入賞した。
自分の踊りと初めて真剣に向き合ったのは、20歳のときの全国舞踊コンクールだ。
一緒に出た同級生のほうがう…