俳優はときに、社会的な課題を巡って苦しむ「当事者」の役を務める。出自が原因で差別される人、過去の性被害のトラウマが残る人、被災者……。そうした人を演じるとき、何を考えるのだろうか。
「一番大事にしているのは、自分が演じる人間と向き合うことです。みんな当事者である前に、人間なので」
菅田将暉さんは、そう語る。
楡(にれ)周平さんの小説を原作とする主演映画「サンセット・サンライズ」が公開中だ。監督を岸善幸さん、脚本を宮藤官九郎さんが務める。エンタメ作品でありながら、震災やパンデミックをテーマに据える。
菅田さんが演じるのは主人公の晋作。コロナ下で外出が自粛されていた2020年、東京の大手企業に勤める晋作は、大好きな釣りを満喫しようと宮城県湾岸部の一軒家に移住する。しかし大家の百香(井上真央)から感染防止のため隔離生活を命じられる。百香が震災で家族を亡くしたと聞き、分かち合えない思いがあると知る。勤め先からは、百香と協力して空き家活用ビジネスをする任務を負わされる。
「色々なことに巻き込まれる才能がありますよね。本人が能動的にやったのは釣りくらい。でも全部ちゃんとこなすんですよ。言われたことを楽しみながら取り組む能力があるからでしょうね。お気楽な人柄なのに一流企業に勤められていることも納得できます」
終盤、晋作が地元の住民たちの前で、被災者を傷つけかねない言葉を叫ぶ。
「晋作はお気楽なだけでなくドライな性格で、自分が本当に好きなこと以外はどうでもいいと思っている。けれど繊細でもあるんですよ」
ただ釣りを楽しみたかっただけなのに、気づけば様々な「当事者」「部外者」のレッテルを押しつけられて、晋作は傷ついていたのかもしれない。
きっかけは19歳で主演した「共喰い」
演じる上で特に気をつけたの…