国の登録有形文化財になった清隆寺本堂と国後島から運ばれたチシマザクラ=根室市松本町

 5月の大型連休が明けるころから根室海峡を隔てて北方領土と向き合う根室振興局管内にも、春の到来を実感させるチシマザクラの開花の知らせが届く。

 本土最東端への桜前線の到着は、根室市の根室地方合同庁舎前庭にあるチシマザクラの標本木の開花で決まる。だが、オホーツク海の冷風が吹く場所にあり、開花が遅い。その前から、市内の清隆寺境内にあって明治初年に北方領土の国後島から運ばれたチシマザクラの古木など、地域の名木は開花が進んでいる。

 その清隆寺の本堂が、昨年8月に国の登録有形文化財に指定された。境内のチシマザクラ同様に国後島から運んだ良質な松材を使い、「気仙大工」の名工、花輪喜久蔵の設計で1925(大正14)年に建った。軒周りの優れた唐獅子などの彫刻が特徴だ。

 清隆寺本堂のように、チシマザクラの名木の周辺には北方領土につながりを持つ歴史・文化遺産が多い。花見の折にそんな遺産類まで足をのばすのも貴重な体験と思い、紹介してみたい。

 代表的な名木が、1906(明治39)年ごろに小学生が野付半島から小船で運んだという別海町立野付小のものだ。高さ約6メートル、枝の最大幅が16メートルほどあり、道内一といわれる。

 野付半島には、江戸時代に国…

共有
Exit mobile version