2022年4月。東京都のジュンコさん(67)はビーチにいた。もう、来られないかもしれないと思った沖縄。でも、夫と2人でまた来られた。2泊3日、いつもと変わらない青い海が広がっていた。
その1年ほど前、ジュンコさんは透析患者になった。おなかに透析液を入れて、自分の腹膜を使って老廃物をとりのぞく「腹膜透析」をしている。温泉や海には入れないけれど、好きなものが食べられる。沖縄そばも、ジーマミー豆腐も、トロピカルフルーツがたっぷりのったかき氷も。
腎臓の異常を指摘されたのは、50歳になったころ。職場の健康診断の尿検査で再検査するように言われた。大学病院で検査をうけると、慢性の腎臓病と言われた。「IgA腎症」の疑いがあり、血液から老廃物を取り除く腎臓の働きが、徐々に失われていくという。
耳慣れない病名だった。でも、自覚症状はまったくない。
もともと、こまかいことは気にしない性格。塩分のとりすぎだけは気をつけたが、これまで通りの生活を送った。体内の老廃物を吸着するという黒い粒状の薬をのみながら、定期的に通院した。
2人の子育てが一段落して、バリバリと仕事をしていた。土日以外はほとんど、全国を飛び回る生活。毎日のように外食をして、飲み会に呼ばれることも多かった。
「腎臓には、あまりよくないだろうな」とは思っていたが、仕事は楽しかった。
50代半ばで転職をして、全国を飛び回る仕事からは退いた。
腎機能を表すeGFRという指標は、じわりじわりと悪化していた。腎臓で1分間にどれくらいの尿をつくっているかを表すもので、正常値は60以上。それが、15年の秋ごろから、15を下回るようになった。
「そろそろ、厳しいのかな」。自分でもうっすらと、意識するようになった。
なんとなくだるい… 示された三つの選択肢
18年になると、「なんとな…