京王電鉄(東京都多摩市)で落とし物が持ち主に返ってくる「返却率」が、急速に上がっている。活躍しているのは、人工知能(AI)だ。
京王電鉄を悩ませていたことの一つが落とし物への対応だった。電車内などで落とし物をすると、利用者は最寄り駅の係員への申告や、遺失物保管所への問い合わせなどをする必要がある。手間や時間がかかり、「連絡するのも大変」「探したくても見つからない」といった声が寄せられていた。
そこで同社は2023年、外部企業との連携を推進する取り組み「KEIO OPEN INNOVATION PROGRAM」の採択企業であるfind(東京都中央区)が開発した「落とし物クラウドfind」を導入。24時間いつでも、メッセージアプリ「LINE」で落とし物の問い合わせの依頼ができるようにした。
利用者が落とし物の特徴や画像を送信すると、その情報を元にAIがデータベース内の落とし物情報と照合できるように。この絞り込みにより、迅速かつ効率的に落とし物を見つけることができるようになったという。
導入後、問い合わせがあった落とし物の返却率は3倍の3割に上昇。月1万6千件近くある落とし物のうち、6千件が持ち主のもとに返されるようになった。電話での問い合わせも3割近く減り、業務効率にもつながったという。
京王電鉄は「これまで落とし物を引き渡すまでには多大な時間がかかっていた。このサービスを活用して、find社のビジョンでもある落とし物が必ず見つかる世界の実現をともに目指していきたい」としている。
鉄道以外での活躍も期待されている。両社で運営するこの検索サービスは3月、内閣府主催の「第4回Digi(デジ)田(でん)甲子園」の民間企業・団体部門(審査委員会選考枠)で優勝し、内閣総理大臣賞を受賞した。野球場や遊園地などでも活用できるのではと、サービスの発展性が評価されたという。