NPO法人ASKの依存症予防教育アドバイザーや精神科医の松本俊彦氏がメディア向けに講演をした=2024年12月25日、東京都千代田区

 依存症当事者の回復や社会復帰を妨げないためには、どのような報道を心がけるべきなのか。依存症の予防教育・啓発に取り組む団体や精神科医らは、昨年ガイドラインを改訂し、薬物使用者の人格を否定するような報道は避け、実名報道は最大限慎重に検討するよう求めている。

 薬物報道をめぐっては、依存症の予防教育や啓発活動に取り組むNPO法人ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)や精神科医の松本俊彦さんらが2016年に「薬物報道ガイドライン」を策定。依存症への誤った理解や偏見にもとづくバッシング報道などを避けるよう、繰り返し求めてきた。

 具体的には、「白い粉」「注射器」などのイメージカットを使わない▽「人間やめますか」といった薬物使用者の人格を否定するような表現を用いない▽「犯罪からの更生」だけでなく「病気からの回復」という文脈で取り扱う――などを盛り込んだ。

 昨年5月、京都府の薬物依存症の回復施設で、入所者が違法薬物を使用した疑いで逮捕され、実名報道が相次いだ。これをきっかけに11月、ガイドラインが改訂された。

 新たなガイドラインでは、デジタル記事がインターネット上の情報として残り続ける「デジタルタトゥー」となり社会復帰の妨げになることから、実名報道には「特段の慎重さを要する」とした。また、薬物報道が「施設への相談・回復者の利用・社会復帰支援を妨げる原因となっている」ことなどが加わった。

 ASKの依存症予防教育アドバイザーや松本さんが12月にメディア向けに講演した。元NHKアナウンサーで危険ドラッグの所持容疑などで逮捕されたASKの塚本堅一さんは「デジタルタトゥーの問題はとても大きく、自分も(当時の報道をみると)心がざわざわしたり、落ち込んだりすることも多い。一方で支援先を教えてくれたのもマスコミで、どんなメッセージを伝えていくかはとても大事だ」と話した。

 松本さんは「実名報道やバッシング報道を通じて、地域で(回復のために)一生懸命活動している人たちが孤立してしまう。また、助かるはずの人たちが地域の回復施設から遠ざかることで、助からないこともあると意識してほしい」と話した。

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