藤井サチさん

 日本新聞協会と全国の会員新聞・通信・放送社は、6日に始まる「春の新聞週間」に合わせ、俳優で歌手の井上芳雄さん、モデルの藤井サチさん、文芸評論家の三宅香帆さんに、情報があふれる中での新聞の価値や、日頃の新聞の読み方について聞きました。

モデルの藤井サチさん「新聞という原点に戻る人もいるのでは」

 幼い頃から母親に「このニュースについてどう思う?」とよく聞かれて育ちました。もともと学ぶことが好きでした。

 今はテレビ番組にコメンテーターとして出演する機会も増え、新聞4紙のデジタル版を購読しています。

 新聞を複数紙読むのは、多様な角度から物事を見るためです。その方が、視野が広がると思います。

「社説を読むのも好きです」

 新聞社によって考え方が違うので、同じトピックでも書き方が異なることがあります。それでも取材を尽くしているから、それぞれに根拠があるんだろうなと思っています。

 社説を読むのも好きです。オフィシャルに考えを発信するのは勇気がいること。(匿名でも発信ができる)SNS(交流サイト)とは違いますよね。内容に重みや厚みを感じています。

 動画投稿サイト「ユーチューブ」に開設した私の個人チャンネルでは、新聞記者を招いて時事問題を学ぶこともあります。これまでに少子化問題や少額投資非課税制度(NISA)の基礎知識、東京都知事選といったトピックを取り扱いました。背景や歴史が分かると、ニュースの見え方も全然違ってきて面白くなります。

 2024年は総選挙のほか、東京都知事選、(前職の失職に伴う)兵庫県知事選をはじめ、注目選挙が続きました。

 選挙期間中にSNSの言説が独り歩きして、結果にまで影響するような力を持ったことに驚いた人も多いはず。情報の発信者にとっては注目を集めることで(広告を多く表示させて)収益化を図るという目的もあったのか、真偽不明の極端な主張が飛び交いました。

「あふれる情報に疲れ、SNSを離れる人も」

 あふれる情報に疲れて、SNSを離れる人が周りにも増えています。

 AI(人工知能)の技術で、本当は言ってもいないことをある人が言ったかのように編集されたような偽の動画や画像といったフェイクニュースも出回るようになりました。

 こんな時だからこそ、信頼性の高い情報が整理された新聞という「原点」に戻る人もいるのではないでしょうか。ファッションの世界でも流行がリバイバル(復活)することってありますよね。

 私が身近な雑誌業界も、「活字離れ」に直面しています。ページ数が少なくなったり、海外での撮影がなくなったり、月刊だったのが季刊になったりと、厳しい状況はモデル自身も分かります。

 その中で生き残っているのは、ユーチューブの動画コンテンツを充実させるなど、早くからウェブ発信にも注力した媒体だと思います。

 私自身は最初、ユーチューブを始めるのは「負けた」気がして悔しかった。私がモデルになったのは10年以上前。これまで、皆で誇りを持って雑誌を作ってきたという思いがありました。

「生存戦略として新しい柱を」

 でも、好きなことを続けられることの方が大事。今は選択肢が広がり自分にプラスになったと考えています。思い切ったシフトチェンジは「したもの勝ち」なのかなって思います。

 新聞業界も従来のやり方を手放すのはきっと勇気がいりますよね。

 でも、生存戦略として新しい柱を立てることは広がりを生むはずです。

 例えば私は、新聞記者が「取材先とこんな交渉をした」と内幕を語る動画をインターネットで見るのが好き。記者の人となりも含めて、裏側をエンタメ化するのも面白いのではないでしょうか。

 ふじい・さち 1997年生まれ。東京都出身。上智大卒。2012年に中高生向け雑誌「Seventeen」(集英社)の専属モデルとしてデビュー。ファッション誌「ViVi」(講談社)、「CLASSY.」(光文社)などでモデルを務める。コメンテーターとしてテレビの情報番組などにも出演している。

俳優・歌手の井上芳雄さん「偶然の出会い、うれしい」

――新聞にはどのようなイメージがありますか。

 育った実家で朝刊と夕刊を取っていました。(郵便受けに)取りに行くのは子どもの仕事でもあり、新聞は当たり前に身近にあるもの。大学生になって東京に出てからも、これまでと同じく購読するものだと思って読んでいたんですけど、大学生で取っている人は少なかったかなぁ(苦笑)。

――どのような記事を読んでいましたか。

 小さい頃はテレビを見ていい時間が決まっていたので、見たい番組の所にマーカーで印を付けて「今日はこれを見ます!」と。(成長して)読める所が少しずつ増えていき、演劇やミュージカルに興味を持って以降は、芸能や文化系の記事を読むようになりました。劇評が載るのが大きかったですね。

――今も購読しているそうですね。忙しいと思いますが、読む時間は確保できていますか。

 自宅で朝刊と夕刊を取っていますが、残念ながら読めない日もあって、きれいなまま回収に出すことも…。ただ全部は読めなくても、ちょっとコーヒーを飲んで一息つけるような時に、2、3ページだけでも読むようにしています。ぜいたくな時間になってしまっているかもしれません。

――ご自身が新聞に載る立場になりましたね。

 僕が出ている作品の劇評はドキドキしながら見ます。基本的には褒められたいから(笑)。1人の役者に触れる量は少しでも、褒められたらうれしくて心に残り、内容も覚えていますよ。切り抜いて、スクラップブックに全部保存しています。けなされたら落ち込み、のみ込むのに時間がかかりますが、何年かたてば良い思い出です。

 書く方も大変ですよね。観劇した作品の内容や背景をくみ取って評価をするには、責任やプレッシャーもあり、勉強もしないといけないと思います。

――新聞の良いところはどこでしょうか。

 今はフェイクニュースと呼ばれるものもあって、情報を見極めることが難しい時代です。その中で新聞は公平であろうとしている、と思います。一つの話題について賛否両方の意見を紹介している。もちろん、人間が作っているものだから間違いもあるかもしれないけど、基本的には信頼しています。

 新聞は知りたい情報を受け取る場でもありますが、興味がなかったり、触れられなかったりしたものに、偶然触れられる場所でもあると思う。そんな偶然性の出合いがたくさんあったら、うれしいですね。

――活字離れが進む中、新聞に期待することは。

 書店にしょっちゅう行けるわけではないので書評欄を見るのも好きです。読んで面白そうと思ったら、すぐにインターネットで買うこともあります。そうやって知る作家さんも結構いるかな。

 今は本当に情報が多くて、知りたければネットを使って自分で情報を取りにいけます。一方で、僕たちの演劇も(新聞と似て)アナログですが、そこじゃないと出合えないものがあると信じてやっています。デジタルネイティブの世代に紙の良さは伝わりにくいのかもしれませんが、何年か前に興味がなかったものでも、今は興味を持っている、ということがありますよね。新聞と出合う機会、触れる機会をもっと増やせればいいんじゃないかなと思います。

――最後に、ご家庭での新聞活用法を教えてください。

 インタビュー記事や投書欄で感動したものがあったら、そこだけ切り抜いて、妻や子どもに「良かったよ。読んでみて」とすすめています。

 わざわざそのページを切り取って渡すので、子どもには「父親はすごく読んでほしいんだ」と伝わるし、子どもも「分かった」と言って読んでくれます。インターネットの記事でも共有はできるけれど、直接紙のやりとりをすることで重みは増すかなぁと思います。

 いのうえ・よしお 1979年生まれ。福岡県出身。東京芸術大在学中の2000年にミュージカル「エリザベート」の皇太子ルドルフ役でデビュー。第33回菊田一夫演劇賞、第20回読売演劇大賞優秀男優賞など数々の演劇賞を受賞。ミュージカルや舞台での活動に加え、テレビの音楽・バラエティー番組にも出演している。

「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」の著書・三宅香帆さん

 新聞はデジタル版で読むが、気になるニュースを読んだ後は、見方が偏らないように複数の新聞社が配信する同様の記事にも目を通すようにしている。報道のスタイルが各社それぞれ違うし、一つのメディアを信じ過ぎないことが大事だ。

 また、新聞記者が実名で公開するSNS(交流サイト)も積極的にフォローしている。「この記者の発言なら信頼できる」と、読む記事を決めることも多い。売り上げや採算にとらわれず記事を書けるのが組織に身を置く新聞記者の強み。記者は会社の主張に沿って記事を書く印象があるが、記者一人一人がもっと前に出て、個人の名前で責任を持って発信した方が伝わりやすいと思う。

 インターネット社会は、SNSで一個人がそれぞれの思いを発信することができる。特に若者は、個人が届ける情報を信頼する傾向が強い。そんな若年層を中心に、新聞離れが顕著だとされている。

「地方の声をどんどん届けて」

 自分の欲しい情報をインターネットで手軽に得ることができる現代は、その背景にある知識や周辺にある文脈が「ノイズ」として除去される傾向にある。そんな現状を、2024年に刊行した「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」(集英社)で、指摘した。

 事件、事故、政治、経済、暮らし、文化などあらゆる分野を網羅した新聞も、「ノイズ」を含むコンテンツだと思う。「ノイズ」を排除し、自分が欲しい情報のみを取り入れていては、偶発的な情報との出合いが生まれず、予期せぬ分野への関心が広がらない。

 取材網が全国に張り巡らされ、記者が地道に取材するメディアは新聞をおいてほかにない。高知で育ち、就職で東京暮らしを経験したが、現在は大学時代を過ごした京都での生活を満喫している。京都は、書店や喫茶店が近くにあって利用しやすい。そんなコンパクトな街のサイズが気に入っている。地方に住んでいると、「東京が日本のスタンダード」という考えに違和感を覚えることがある。各地にネットワークを持つ新聞には、地方の声をどんどん届けてほしい。

 みやけ・かほ 1994年生まれ。高知県出身。京大大学院在学中の2017年に「人生を狂わす名著50」(ライツ社)でデビュー。会社員生活の傍ら執筆活動を続け、22年に独立。24年刊行の「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」(集英社)で「書店員が選ぶノンフィクション大賞」受賞。京都市立芸術大非常勤講師も務める。

 日本新聞協会は、読んで心が温かくなった新聞記事とその理由を募集する「HAPPY NEWS2025」を実施しています。応募はオンラインコミュニティー「おうち学習の〝ワッ!〟くらぶ」(詳細はQRコード)で。5月20日まで。

心が温まった記事を募集中

◇この記事は春の新聞週間に合わせて、日本新聞協会の会員新聞・通信・放送社が共同制作したものです。

共有
Exit mobile version