連続千日手、評価値では計れない領域――。戦略家同士が激突した第83期名人戦七番勝負(朝日新聞社、毎日新聞社主催、大和証券グループ協賛)は現代将棋の極北に達する戦いだった。永瀬拓矢九段(32)の挑戦を4勝1敗で退けて防衛、3連覇を飾った藤井聡太名人(22)=竜王・王位・王座・棋聖・棋王・王将と合わせ七冠=は「将棋は唯一解を探すゲームではない」と語る。

インタビューで笑顔を見せる藤井聡太名人=東京・千駄ケ谷の将棋会館、菊池康全撮影

 ――名人戦を振り返って。

 長くVS(練習対局)を続けている永瀬九段との初めての名人戦で、各9時間の持ち時間で指せた充実感はあります。中盤で多くの時間を使う名人戦ならではの読み合い、千日手指し直しとなった第4・5局の中終盤の逆転。より良い手の「追究」と残り時間を意識した「勝負」のどちらも感じられたシリーズでした。先後どちらも経験したことのない将棋を指せたのも意義のあることでした。

名人戦全5局の自戦解説を行う藤井聡太名人

 ――第2・3局の千日手模様も含め、千日手をめぐる攻防が続きました。

 (千日手模様になりやすい要因として)全体として後手善戦の傾向もありました。後手が誘導する作戦が機能し、相手の予想をかわすことに成功したことが理由だと思います。

 昔は「千日手とは打開するも…

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