第73期王座戦五番勝負第1局に臨む藤井聡太王座(右)と挑戦者の伊藤匠叡王(左)=2025年9月4日、シンガポール、日本将棋連盟提供

 将棋の藤井聡太王座(23)=名人、竜王、王位、棋聖、棋王、王将と合わせ七冠=に伊藤匠(たくみ)叡王(22)が挑戦する第73期王座戦五番勝負(日本経済新聞社主催)の第1局が4日、シンガポールの「アマラ・サンクチュアリ・セントーサ」で指され、後手番の藤井王座が66手で勝った。王座戦3連覇へ、幸先良い1勝を挙げた。第2局は18日、神戸市の「ホテルオークラ神戸」で指される。

 ともに2002年生まれの好敵手がタイトル戦で激突するのは今回が4回目。2023年10~11月の第36期竜王戦七番勝負では藤井竜王が4連勝で防衛し、24年2~3月の第49期棋王戦五番勝負では藤井棋王が3連勝(1持将棋)で防衛。だが、同4~6月の第9期叡王戦五番勝負では伊藤挑戦者が3勝2敗でタイトルを奪取し、藤井叡王の八冠独占を崩した。

 今回は伊藤叡王は二つ目のタイトルを目指す戦い。藤井王座にとっては、昨年の叡王戦で敗れた相手への雪辱がかかる戦いとも言える。

 今年度は両者とも好調で、藤井王座は11勝3敗、伊藤叡王は15勝3敗(いずれも未放映のテレビ対局を除く)。

 開幕局は、「シンガポール建国60周年記念対局」と銘打ち、実施された。前日の対局室検分などでも両対局者の笑顔が見られ、海外対局にリラックスして臨む様子もうかがえた。

第73期王座戦五番勝負第1局の対局室検分で笑顔になる藤井聡太王座(右)。左は挑戦者の伊藤匠叡王=2025年9月3日、シンガポール、日本将棋連盟提供

 振り駒で、先手番は伊藤叡王に。後手の藤井王座が「雁木(がんぎ)」を選択。早い段階で戦いが起こり、藤井王座が鋭い攻めでリードを奪った。伊藤叡王も勝負手を放ったが、藤井王座が勝ちきった。

 終局後、藤井王座は「(自分にとっては)2回目の海外対局だったが、対局に集中して指すことが出来た。対局以外も含め、いろいろ経験できた。(第2局からは、あらかじめ)先後が決まった戦いになる。次の対局に向けて、しっかり準備をしていきたい」と語った。

第73期王座戦五番勝負第1局に臨む藤井聡太王座=2025年9月4日、シンガポール、日本将棋連盟提供

 伊藤叡王は「海外対局は初めての経験。現地の方に温かく歓迎していただき、良い経験になった。シンガポールの方々に感謝したい。本局は精度を欠いた。しっかり反省して、次に生かしていきたい」と述べた。

第73期王座戦五番勝負第1局に臨む、挑戦者の伊藤匠叡王=2025年9月4日、シンガポール、日本将棋連盟提供

 藤井王座は、第66期王位戦七番勝負も並行して戦っている。そちらは挑戦者の永瀬拓矢九段(32)を相手に藤井王位が開幕3連勝を飾ったが、その後、永瀬挑戦者が2連勝を返す展開。注目の第6局は9、10の両日、静岡県牧之原市の「平田寺」で指される。

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