アフガニスタンを訪れた藤原紀香さん=2002年7月、Smile Please☆世界子ども基金提供

 俳優の藤原紀香さんがアフガニスタンやカンボジアを訪ね、厳しい環境で生きる子どもたちを写したチャリティー写真展「Smile Please!~アフガニスタンで感じたこと、カンボジアで考えたこと~」が2025年1月10~21日、福岡市で開かれる。22年間にわたり教育支援を続ける思いや原点を聞いた。

  • 【連載】追いつめられる少女たち アフガニスタン政変3年

 2001年の米同時多発テロを機に米国の対テロ戦争が始まり、アフガニスタンでは旧タリバン政権が崩壊した。藤原さんは翌年、「自分の目で現状を見たい」と日本テレビの番組で同国に入り現地をリポート。そこでは、長年の内戦や戦乱で崩壊した教育現場を立て直そうと、多くのNGOが奮闘していた

 「読み書きを教える識字学校に、クレヨンと画用紙を持って行きました。大きなロウソクや花に囲まれた家など欲しいものを描く子がいるなか、青一色で、家族を傷つけられた場面を描く子がいました。深いトラウマを抱えた様子に、人のいない場所で泣いてしまいました」

 「ユニセフが運営するテント学校では、子どもたちがパズルをつくっていました。図工の時間かな、と思ったら、地雷教育でした。爆弾の種類を知らなければ、手足や、命を失うこともある。(日本とは)全然違う世界でした」

 約1週間の滞在中、持ち込んだ一眼レフカメラで約1500枚の写真を撮った。帰国後に写真展を開き、大人300円の入場料の全額に自身の寄付も加え、04年に同国中部のバーミヤン県に女子小学校を建てた

 「現地では悲惨な光景もたくさん見ましたが、学校に通う子どもたちは笑顔でした。ぼろぼろの教科書を持って通い、『大統領になりたい』『エンジニアになりたい』と夢を語っていた。色んなチャリティーがあるけれど、私は教育分野で平和の心を育てたい、と思いました」

アフガンのいま「胸が痛い」

 その後も写真展を重ね、収益を教育支援に充ててきた。だが現地では21年に米軍が撤退しタリバン政権が復権、女子教育の制限を打ち出した。多くのNGO関係者らも国外脱出を余儀なくされた

 「親と亡命し、故郷に帰れないアフガニスタン人の子どもが日本国内にもいます。子どもたちから『母国の教育環境の改善に力を貸してください』と連絡をもらったこともあります。今は報道で見ることしかできず、胸が痛みます。行けるようになったら、必ずまた訪れたいです」

 アフガニスタンでは約30年にわたって人道支援に取り組んできた福岡出身の中村哲(てつ)医師が19年に銃撃され、亡くなる悲劇も起きた

 「現地の人たちからも尊敬されていた中村さんが殺されてしまったと聞き、悲しみにくれました。真の平和が訪れるのはとても難しいですが、諦めてはいけないのだと思います」

 カンボジア訪問は04年が最初だった。「3年B組金八先生」で知られる脚本家の故・小山内美江子さんが立ち上げたNPO法人「JHP・学校をつくる会」と協力し、内戦で多くの人々が虐殺された歴史を持つ同国で4校、ネパールで1校の学校を建てた

 「学校を建てて終わりではなく、定期的に校舎を修繕したり、図書や教材を届けたりしています。持続活動な形にしていきたい」

 「23年、カンボジアで15年ぶりにある学校を訪れました。すると『私のこと、覚えていますか?』と声をかけられて。08年の竣工(しゅんこう)式で『教師になりたい』とスピーチした女子生徒でした。夢をかなえて、母校で教えていたのです。胸がいっぱいになりました」

原点は阪神大震災

 俳優の仕事も、社会貢献も、原点は95年の阪神・淡路大震災だという。発災を知ったのは、大学卒業後、モデルの仕事を終え関西空港に向かう飛行機の機内。当時暮らしていた兵庫県西宮市の自宅まで、線路伝いに押しつぶされた家屋の脇を歩いた。避難所で支援に当たるなか、ある光景に背中を押された

 「寒さに震えていたお年寄りが『隣町に石原軍団が来てくれたんだよ』と笑顔になっていた。ミュージシャンの大江千里さんや俳優の黒田福美さんら多くの著名人が来てくれました。当時、芸能界入りは親に反対されていましたが、『華々しいだけじゃない、力を与えられる存在になりたい』と、2カ月後に上京。以来、俳優としてだけでなく、何か社会に役立つ活動を、とずっと思ってきました」

 写真展は今回で52回目を数える

 「『紀香さんが撮った写真だと思うと、より心に浸透してきました』『帰って子どもたちと話してみます』と言葉をいただくのがうれしい。ボランティアは他者のためだけじゃなく、自分の心を明るくしてくれるパワーの源です」

 「アフガニスタンや、今戦争が勃発しているほかの地域でも、争いとは全く関係ない子どもたちが生きています。兵器をつくるのも人間。争いは争いしか生まない。そんなことを少しでも考えるきっかけになれば、と思っています」

 「藤原紀香チャリティー写真展 Smile Please!~アフガニスタンで感じたこと、カンボジアで考えたこと~」は、朝日新聞社が主催し、1月10~21日に福岡市中央区のカイタックスクエアガーデンで開かれる。

 イベントの収益は、藤原さんが発起人を務める「Smile Please☆世界子ども基金」を通じ、アフガニスタンとカンボジアの教育支援事業に充てる。入場料は当日券のみで500円(未就学児無料)。平日は午前11時~午後7時、土日祝は午前10時~午後6時(最終日は午後2時まで)。ウェブで作品を観覧できるデジタル写真展も同じ日程で開催する。視聴料はクレジット決済のみで500円。

 問い合わせは、朝日新聞イベント運営事務局(0120・123・396)へ。

 ふじわら・のりか 1971年、兵庫県生まれ。大学在学中にミス日本グランプリを受賞し、卒業後に芸能界デビュー。赤十字広報特使としても東日本大震災の被災地訪問を重ね、熊本地震では炊き出しなどで被災者を励ました。

共有
Exit mobile version