ロシア連邦保安局(FSB)が入るモスクワ中心部の建物。元々は旧ソ連の情報機関、国家保安委員会(KGB)が入っていた=2019年、朝日新聞社

Secret Russian Intelligence Document Shows Deep Suspicion of China

 ロシアと中国の友好関係は深まるばかりで揺るぎなく、戦略的な軍事・経済協力は黄金時代に入った――。ロシアのプーチン大統領は公の場でそう語る。

 しかし、(モスクワ中心部の)ルビャンカ広場に本部を置き、FSBの略称で知られるロシアの国内治安機関「連邦保安局」の廊下では、謎めいた諜報(ちょうほう)部門が中国を「敵」と呼んでいる。

 これまで存在が明らかにされてこなかった同部門は、中国がロシアの安全保障に対する深刻な脅威であると警鐘を鳴らしている。FSBの工作員らによれば、中国政府は、ロシア人のスパイ要員を勧誘して機密性の高い軍事技術を入手しようと力を入れており、時には不満を抱えるロシア人科学者らに勧誘工作を仕掛けている。

 中国は西側諸国の武器や戦闘技術を知るため、ウクライナにおけるロシア軍の作戦をスパイしている、と工作員らは語る。彼らはまた、中国人学者らがロシア領土への領有権を主張するための下準備をしているのではないかと懸念している。さらに、中国の情報工作員らが、鉱山会社や大学の研究機関を隠れみのにして、北極圏でスパイ活動をおこなっていると警告している。

 こうした脅威は、中国のスパイ活動を阻止するための優先事項をFSBが定めた、計8ページの内部計画文書に詳述されている。ニューヨーク・タイムズ(NYT)はこの文書を入手した。文書には日付の記載がなく、草案である可能性もあるが、文脈から判断すると、2023年末から24年初頭にかけて作成されたものとみられる。

 この文書は、サイバー犯罪集団「Ares Leaks」が入手したもので、入手経路は明らかにされていない。そのため、本物かどうかを断じることはできないが、NYTがこの文書を西側諸国の六つの情報機関と共有したところ、いずれの機関も本物と判断した。文書は、ロシアの防諜機関が陰で中国のことをどう考えているかを、かつてないほど詳細に明らかにしている。ロシアが22年2月にウクライナへ侵攻して以降、ロシアと中国は結束を新たにし、世界のパワーバランスに変化をもたらしてきた。急速に拡大する両国のパートナーシップは、現代の地政学において最も影響力が大きく、かつ不透明な関係の一つだ。

 ロシアはウクライナ侵攻後、西側諸国の数年にわたる金融制裁を耐え抜き、ロシア経済の崩壊を予測した多くの政治家や専門家の見通しが誤りであったことを証明した。持ちこたえられたのは、中国の支えによるところが大きい。

 中国はロシア産石油の最大の買い手であると同時に、必要不可欠なコンピューターチップやソフトウェア、軍用部品をロシアに供給している。西側諸国の企業がロシアから撤退した際には、中国ブランドがそれらに取って代わった。両国は、映画制作から月面基地建設まで、幅広い分野での協力を進めたいとしている。

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