Smiley face
写真・図版
血圧、いつはかる?

 みなさん、血圧をはかりましたか? いつ、どのような場所ではかったでしょうか。今回は、「正しい血圧のはかり方」がテーマです。最近ちまたで見かける、ウェアラブル端末の実力についても紹介します。前回に引き続き、自治医科大学の苅尾七臣教授が担当します。

    ◇

 一日のうちのいつ、血圧をはかったらよいのか。その答えはずばり「朝」です。日本高血圧学会では、朝一番の血圧測定をおすすめしています。

 なぜなら、朝は、一日のうちで最も血圧が上がりやすいタイミングだからです。そして、脳卒中などの不慮の事故がおこる時間帯は、午前中に集中しているためです。

 血圧は、一日の中でも変動していて、眠っている夜間は下がります。一方で、眠りから覚め、交感神経のスイッチがはいる朝は、血圧が上がります。高血圧の薬を飲んでいる人も、朝の血圧をコントロールできている人は半分以下にとどまります。前日に飲んだ薬の効果が薄れてくるという点でも、朝は血圧が上がります。

 ここで問題です。朝に血圧をはかるときのポイントとして、つぎのうち間違っているものはどれか、分かりますか。

●朝の血圧測定。間違っているのはどれ?

1 起床後1時間以内

2 排尿前

3 すわって1~2分安静にした後

4 服薬前

5 朝食前

 間違っているのは、「2.排尿前」。これは、「排尿した後にはかる」のが正解です。実は、今年の医師国家試験にも出た問題です。膀胱(ぼうこう)が充満していると、血圧が高めに出ますので、朝一番のおしっこを出したあとに測定しましょう。

 そして、寒い時期は部屋を暖めておくことも大切です。室温は18度以上をめやすにしてください。気温による影響を受けやすい高齢の方は、室温22度以上がめやすです。

●朝の血圧の正しいはかり方

1 起床後1時間以内

2 排尿「後」

3 すわって1~2分安静にした後

4 服薬前

5 朝食前

腕時計型や指輪型の新血圧計、その実力は?

 血圧測定の一番のおすすめは朝、次は夜の就寝前ですが、忙しくてなかなか難しいという人も多いと思います。そんなときは、いつでも、どこでも、「血圧計を見かけたらはかる」ことを習慣にして欲しいと思います。

 日本高血圧学会では、診察室と家庭以外の場所ではかる血圧を「キオスク血圧」と定義して、広めていこうと考えています。職場や薬局、スポーツジム、病院、公共施設の一角などに置いてある血圧計で、自分ではかる血圧をさします。できれば、職場などにも1台、誰でも使えるように置いてほしいですね。

 でも、もっと簡単にはかれたら……。そんな希望に応えるべく、最近、「カフレス血圧計」というものが登場していることをご存じですか? 腕にまいてぎゅーっと締めつける腕帯(カフ)のない、ウェアラブル端末です。腕時計や指輪のような形状のものが市販されています。常時身につけて、簡単に血圧をはかることができる。便利だと思いますよね。

 ただ、残念ながらその実力は、「医療用として用いるのにはまだ不十分」というのが現状です。国際学会でも議論が行われていますが、現時点では、「正確さが求められる高血圧の診断や評価」には、こうした新しい技術による血圧測定装置の使用は「推奨しない」ことが提言されています。

 通常のカフ型の血圧計では、カフに内蔵されたセンサーで、脈の圧力の変化を実際に計測しています。

 一方で、現在出回っているカフレス血圧計は、血圧そのものをはからず、血流量の変化や脈が伝わる速さをみて、数値を間接的に推計しているものがほとんどです。上腕にまくカフ型の血圧計と比較したデータなども乏しく、「体を動かしてもあまり数字が変わらない」「薬を飲んだ効果が分かりづらい」などの課題もあり、さらなる技術革新を期待したいところです。

 形はカフレス血圧計と似ているのですが、手首に巻く腕時計タイプのカフ型血圧計、というものも登場しています。こちらは、まずまずの成績です。まだ高価で、「心臓の高さではかる」など使い方にコツが必要ですが、イライラしたときなどに自分ではかってみることができて、自身の傾向を知るツールとして活用することが期待されています。

何はともあれ「朝はかる」を習慣に

 血圧計の進化も横目でみながら、まずは、「朝はかる」「気になったらいつでもどこでもはかってみる」ことを習慣にしてみませんか。血圧は、まずはかって、自分自身の数値を知るところから始まります。

 「上の血圧が130ミリHgを超えている」なら、今から、生活の中でできる対策をはじめましょう。それでも、高いレベルが続く場合は、一度、医療機関を受診してみてくださいね。

写真・図版
血圧は「朝」はかろう!

 次回は、仕事のストレスと血圧について考えます。

共有