三本木農業恵拓高校の相撲部。(左から)小笠原広祐さん、主将の三浦孝太さん、顧問の長谷川将臣先生=2024年12月24日、青森県十和田市、渡部耕平撮影

 高校相撲の名門として知られる、青森県の三本木農業恵拓高校。相撲部がつくるちゃんこ鍋は、地元で行列ができる「横綱級」のおいしさだ。伝統の味には、農業を学ぶ部員ならではの思いが込められている。

 相撲部は全国高校総体で3回の優勝を誇り、先輩には大相撲の錦富士関や阿武咲(おうのしょう)関らがいる。

 ちゃんこ鍋は、20年以上にわたって受け継がれてきた。定番は塩味、みそ味、しょうゆ味。ふだんは合宿での食事としてつくられるが、学校の文化祭では大人気のメニューで、地域の人たちにも親しまれている。今年の文化祭では塩味とみそ味をつくり、1日に600杯が完売したほどだ。

 そのちゃんこ鍋が、初めて校外に「出店」したのは12月。地元の十和田市であった食のイベントに、同校の生徒たちが企画した店舗の一つとして参加した。

 店の名前は「三農相撲部特製ちゃんこ」。寒空の下でテントを張った炊き出しのような店構えだったが、大きな鍋から立ち上がる湯気と、おいしそうなにおいに誘われ、開店まもなく20人以上が並んだ。

 塩味で1杯300円。鶏肉や野菜がたっぷりの鍋から部員がおわんによそい、味わった客から「おいしかったよ」「相撲がんばってね」と声をかけられていた。用意した250杯分は完売。部員たちは「喜んでもらえてよかった」と笑顔を見せていた。

 調理と仕込みを担当した、顧問の長谷川将臣(まさおみ)先生(32)は「学校を出て、地域のなかで活動することの良さを部員たちは感じたと思います。相撲部を知ってもらい、応援していただくことが、彼らの力になるはず」と期待する。

 おいしさには、特別な理由がある。材料に使う大根やキャベツ、ニンジンなどの野菜はすべて、生徒たちが学校の畑で育てたものだ。

 主将の三浦孝太さん(2年)は植物科学科で、米や野菜の栽培を学んでいる。「農作物を育てる大変さがわかるので、食べ物は大事に、丁寧に扱っています。そんな自分たちの思いが、ちゃんこ鍋に込められています」と胸を張る。

 同じ学科の小笠原広祐(こうすけ)さん(1年)も、味に誇りを持っている。「みんなで一生懸命につくった野菜には、愛着がわきます。農業への愛情がたっぷり入ったちゃんこ鍋です」

     ◇

三本木農業恵拓高校相撲部のちゃんこ鍋レシピ(塩味)

 【材料】(40人分)

 ・だし=水8リットル、乾燥しいたけ500グラム、鶏ガラ1羽分、おろしニンニク(チューブ)30グラム、ごま油少々、ざらめ少々、鶏ガラスープのもと(お好みで)

 ・具材=鶏もも肉1キロ、肉だんご40個、キャベツ1個半、大根1/2本、ニンジン3本、しめじ2パック、えのき2パック、油揚げ1・5パック、ネギ1・5本

 【おおまかな作り方】

 (1)鶏ガラでだしをとり、乾燥しいたけを入れる。

 (2)食べやすい大きさに切った材料を煮る。鶏肉と肉だんごに火が通ったら、大根とニンジンを入れ、そのあとでしめじ、えのき、油揚げを加え、おろしニンニクも入れ、アクを取りながら煮込む。

 (3)煮立ったら、キャベツとネギを入れる。

 (4)隠し味で、ごま油とざらめを入れる。お好みで、鶏ガラスープのもとを加えて味をととのえる。

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