現場へ! 文化財どう活用(2)
かつて炭鉱で栄えた北海道赤平(あかびら)市。市内には、街のシンボル的な存在でもある高さ40メートル超の旧住友赤平炭鉱の立て坑櫓(やぐら)などが残る。この炭鉱遺産をめぐり、今年3月、市長の畠山渉(57)から異例の発言が飛び出した。
「任期中は(国の重要文化財の)指定を受けない」
市は2017年、炭鉱遺産を保存・継承し、幅広く活用しようと「市炭鉱遺産活用基本構想」を策定。18年には櫓の隣接地にガイダンス施設を建設し、1日に2回、ガイドつきで施設内を公開している。立て坑櫓は日本遺産「炭鉄港」の構成資産でもあり、23年には価値を明確にするための調査も実施。「国の重要文化財相当」と評価されたのにもかかわらず、だ。
理由は、もし重文に指定されると、老朽化が進む施設の保存修復に多額の費用が見込まれるためだ。市社会教育課文化財保護室文化財保護係長の井上博登(ひろと)(47)によれば、これまで維持・管理に数千万円をかけてきたが、本格的に改修する場合、「少なく見積もっても、10年で約13億円はかかる」。
市民への説明会や市民アンケートでも「現状程度なら良いが、文化財の保存にこれ以上の費用をかけるのは望ましくない」との声が多かったという。
炭鉱の閉山(1994年)か…