街の本屋さんが急速に減る中で、本を巡る新しい風が吹き始めている。
7月の日曜日。午前9時20分、新潟県長岡市のお寺の境内に1台のワゴン車が到着した。後方のドアを開けてテントや折りたたみ式の棚を取り出し、約1千冊の新刊本を並べていく。「ハリ書房」の開店だ。
午前10時の開店と同時に、親子や小学生のグループらが次々と入店してくる。自転車で訪れた小学5年の男子は、こづかいの千円札を握りしめてなぞなぞの本を購入した。「前に来たときに欲しいと思ってた」とうれしそう。「いつもありがとうございます」。店主のハリーさんと妻のちひろさんが声をかけた。
「本屋がないなら本屋から会いにいけばいい」
ハリーさんが移動書店を始め…