駅前や公園に集まって紛争に関する本を読み、反戦や連帯の思いを示す――。そんな「本読みデモ」が静かに広まっている。街頭で声を上げるデモには抵抗を感じるという人が、思いを表明する機会となっている。(大下美倫)
「宗教や政治の問題はだめ」 一人で駅前に本を並べた
5月上旬、鹿児島市のJR鹿児島中央駅前の一角に約10冊の本が並んだ。
表紙には「パレスチナに生まれて」「ガザとは何か」との題が。横には「ご自由に手に取って読んで下さい」と書かれている。
2時間で2人が足を止めて本を読んだ。寄付を申し出る人もいた。
このデモは、同市の会社員の女性(44)が「パレスチナが、誰かの目にとまるきっかけになってほしい」と企画した。
もともと、パレスチナ問題に関心があったわけではない。「中東は危険」と漠然としたイメージを持っていた。
昨年10月にイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が始まると、SNSで現地からの報道を目にし、「今まで知ろうとしないで、ずっと無視してきたんだな」と痛感した。オンラインの講演や本で問題を学び始めた。
そのうち、自分で集めた本をレンタルスペースで展示し、来た人に手にとってもらうことができないか、と考えるようになった。ところが、スペースを借りようとすると、「宗教や政治の問題はだめ」と断られた。
「なんでタブー視するんだろう」。もやもやした気持ちが残った。
そんな時、SNSで、1人で…