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香川伝統の漆芸技法「彫漆」に挑戦する和宗貴徳さん=2024年9月30日午後3時17分、高松市、内海日和撮影
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 日本海の荒波にのぞむ石川県輪島市と、穏やかな瀬戸内海に面した高松市。気候も風土も違う両市は、全国有数の漆器の産地という共通点がある。ありそうでなかったコラボ作品が能登半島地震をきっかけに生まれ、17日から高松で展示される。

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 能登半島が最大震度7の揺れに見舞われた1月1日、輪島塗の蒔絵(まきえ)師、和宗(わそう)貴徳さん(60)は妻の実家がある高松にいた。

 自宅と工房のある輪島市西脇町に一度戻ったのは1週間後。自宅は倒壊こそ免れたものの、基礎と土台がずれ、裏山では土砂崩れが起きていた。生活を立て直すのは難しいと考え、高松の妻の実家に身を寄せることに決めた。

 兼業農家に生まれ、中学生の頃、テレビのドキュメンタリーを見て輪島塗に魅了された。16歳で蒔絵師に弟子入りした。

 蒔絵は分業制で作り上げる輪島塗の技法の一つで、漆で絵を描き、乾かないうちに金粉などを付着させる。

 1989年に独り立ちし、2003年、国の伝統工芸士に認定された。地震の前は、神社の山車や獅子舞で使われる獅子頭の修復に携わるなど活動の幅を広げ、経済的にも安定していた。

 40年以上続けてきた仕事が途絶えたショックは大きかった。輪島から蒔絵筆や制作途中の漆器を持ってきたが、漆の仕事を再開するかは迷った。

背中を押すきっかけは名刺

 地震から約1カ月たったころ…

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