東日本大震災などで被災した中小企業に貸し付けるための政府出資金のうち、企業から返済されるなどした95億円が使われる見込みのないまま、事業者支援を担う独立行政法人「中小企業基盤整備機構」(東京)に残っていた。会計検査院の調べでわかった。
独法は事業に必要がない政府出資金について、国庫に納付する義務がある。同機構は検査院の指摘を受け、全額を国庫に納付した。
同機構は経済産業省所管の独法で、東日本大震災や福島県沖地震で被災した中小企業に施設の復旧費などを無利子で貸し付けている。機構が各道県に資金を貸し付け、各道県の公益財団法人から企業に貸付金が渡る仕組みだ。
政府は2012年、事業の財源として機構に500億円を追加で出資した。検査院によると、500億円の大半が被災企業に貸し付けられ、その後に企業が返済するなどした償還金95億円(24年4月末時点)が各道県から機構に戻されていた。
機構は17年3月にこの資金を原資に7381万円を再び岩手県に貸し付けていたが、その後は再使用していなかった。同年5月に、その後も償還金を再使用する可能性があると判断して以降、国庫への納付は検討していなかった。
「保有は適切でない」
事業は23年度末時点で岩手、宮城、福島の3県で続いているが、すでに各県に交付された貸付金で当面の必要額は賄え、新たに貸し付ける場合も別の財源で対応できる見通しだった。そのため、検査院は95億円について再使用の見込みがないと判断。「保有は適切ではない」と指摘した。
機構は検査院の指摘を受け、昨年11月に95億円全額を国庫に納付。今後は毎年度、同様の償還金を国庫に納めることにしたという。機構は取材に対し、「検査院の指摘を真摯(しんし)に受け止め、継続して必要な対応を行う」と回答した。