Smiley face
「あての木園デイサービスセンター」で、被災地を応援する新聞記事を見て談笑する利用者の福島よし子さん(中央)と山崎妙美所長(右)ら職員=2024年3月19日、石川県輪島市
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 能登半島地震の被災地で、高齢者の在宅生活を支える介護事業所が再開し始めている。「地元に戻りたい人のために」と踏ん張るものの、避難による利用者や職員の減少で経営が苦しい状況もある。地域から介護サービスを失わせないための模索が続いている。

 石川県輪島市の社会福祉法人輪島市福祉会が運営する介護事業所「あての木園デイサービスセンター」に通う福島よし子さん(90)は、仲間や職員と過ごしながらほほ笑んだ。「ここは、みんなと話せるのが楽しい。うちにいても、じっとして何もせん。再開してくれてありがたい」

 取材に訪れたのは、同センターが再開した2月23日から1カ月ほど後の3月19日。福島さんは、シャワー浴をしたり、体操したり。昼食後は被災地を応援する新聞記事を話題におしゃべりを楽しんでいた。

 事業所の再開は、家族の安心にもつながっている。福島さんと暮らす娘(65)は「母は、近所の友人が避難して寂しそうでした。みなさんと話せるようになってうれしい」と言う。

 同センターは、地震の影響で水道や電気が止まり、職員14人、利用者約70人の多くは避難先へ移り休止を余儀なくされた。

 自宅にとどまる利用者は8人いたが、家族と同居していても、日中は仕事で不在がちな場合も少なくない。

 食事はとれているだろうか、体は衰えていないか……。同センター所長の山崎妙美さん(54)は、全壊した実家で1人で暮らしていた母の避難先の準備などに追われるなか、利用者の暮らしを案じていた。

 水を循環させるシャワーや昼食用の冷凍食品が用意できることになり、利用者に震災前の生活に少しでも戻ってほしいとの思いから、2月23日に再開した。

 開所は通常より2日少ない週4日で、出勤できる職員は6人ほどだったが、再開を待ちわびていた利用者8人に続き、3月半ばには避難所で暮らす3人の通所も始まった。

 利用者たちは言う。「家族がいても、家では日中は1人。地震が起きたら怖い。ここはみんながいるので安心」「気を張らんでいい仲間の顔を見て、会話できるんが楽しい」。避難所から通う男性(85)は、介護職員にひげをそってもらい「すっきりした」。「いい男になった」と返す山崎さんと笑みを交わした。

 避難所から通う3人は異なる地域で暮らし、ふだんなら出会うことがなかったかもしれない人たち。「介護事業所が新たな交流の場になり、利用者に笑顔が戻ることが生きる糧です」と山崎さん。

 ただ、経営は厳しい。

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