能登半島地震で隆起した鹿磯海岸(石川県輪島市門前町)を見下ろす丘に建つ、ハイディワイナリー。被災したが醸造所は形を保ち、ワインも9割が無事だった。社長の高作正樹さん(42)は「ダメだったら、これからどう生きていけばいいのか途方にくれただろう」と振り返りつつ、発災後、様々な人たちの支援に感謝を込め、ワイン造りへ前を向いている。
在庫が無事だったワイン「CLARA 2021」はこの夏、日本ワインコンクールの欧州系品種白ワイン部門で金賞に輝いた。発売した昨秋から飲食店関係者からの評判がよく、受賞後には売り切れとなった。
ワイナリーは2011年設立だが、ワイン造りとは無縁の人生だった。横浜市で生まれ育った高作さんは大学では工学、大学院では法学を専攻。「ワイン好きが高じてというより、ビジネスとして思いついたんです」と起業のきっかけを語る。
高校生のころ留学したスイスではワイナリーが一つの文化だった。大学院生だった26歳のとき、海外と比べて日本にワイナリーが少ないことに商機を見いだした。国内に今では500軒以上あるワイナリーは、当時まだ160軒以下だったという。
日本の豊かな魚介類に合うワインをコンセプトに固め、ブドウ栽培を新潟のワイナリーで、醸造をフランス・ブルゴーニュで学んだ。北海道など様々な土地での土壌分析の結果、ミネラル分が豊富な門前町を選んだ。「まず味として価値があるものを造らないと、作り手や飲み手のプロと渡り合えませんから」
「畑違い」の仕事ではあるが…