ノーベル平和賞を受けた「日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)」の金本弘代表理事(80)=名古屋市=が12日、大阪・関西万博の会場で講演した。被爆者としての体験を語り、「被害を受けたのは広島、長崎のごく普通の市民。核兵器は人間として絶対に認めることができない『絶対悪』の兵器だ」と訴えた。
金本さんは広島で生後9カ月の時に被爆。がれきの下敷きになった。この日は万博の「平和と人権」テーマウィークのイベントで登壇し、これまで数度しか話していないという12歳上の姉・千代子さんについて語った。
学徒動員されていた千代子さんは、爆心地から1キロ離れた場所で被爆した。夏でも服は長袖、長ズボンで、左半身に残るケロイドを隠していた。家族に反対されながら結婚、出産して初産は死産だった。86歳で亡くなるとき、「国に言えるなら、娘時代を返してほしい」と言ったという。
金本さんは「姉がどんだけ苦しい人生を送ってきたのか。たった1人なんですけど、1人の人生は重い」と涙を流しながら語り、核兵器の廃絶を訴えた。
イベントでは、被爆者の近藤紘子さんや国連事務次長の中満泉さんらも登壇し、紛争が生活に与える影響などを話し合った。