「Unknown People – Mannequins Depicting A-bomb Victims」(2024年)の展示風景

 人の心を強烈に動かすイメージは、どう作られるか。かつて広島平和記念資料館で展示されていた被爆再現人形をめぐる美術家・菅(かん)亮平さん(1983年生まれ)のリサーチプロジェクトは、「フィクションのはらむ力と危うさ」を淡々と語る。

 79年前のあの日。やけどした皮膚を垂らし、燃えさかるがれきの街をさまよう婦人と少年少女――。今回、原爆の図丸木美術館(埼玉県東松山市)の「菅亮平 Based on a True Story」展に並ぶのは、3体の被爆再現人形を、背景が白と黒の2パターンずつ撮影した原寸大の写真だ。

 人形に光を均一に当てた白背景の写真は、焦げた髪の質感や服の破れ具合といった細部に至るまで、モノとしての造形を克明に描き出す。一方、黒背景の写真では広島平和記念資料館のジオラマのライティングが再現され、劇的な明暗表現によって「人がそこにいるかのような」臨場感が生じている。対照的な二つの写真を並べることで、「原爆の痛みや恐怖を人々に印象づけるという、人形のフィクション性が持つ機能を検証したい」と菅さんは言う。

 91年から展示されていた被…

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