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日本弁護士連合会が作成した「被疑者ノート」。「留置担当者や取調官に見せるべきではありません」と太字で記されている

 勾留中に弁護人との接見内容を記した「被疑者ノート」を持ち去ったのは違法だとして、北海道警に逮捕された女性=不起訴=と弁護人が道に慰謝料計160万円を求めた訴訟の判決が3日、札幌地裁であった。布施雄士裁判長は黙秘権と接見交通権の侵害に当たると認め、計25万円の支払いを命じた。

 判決によると、女性は2021年6月、当時2歳の息子を監禁した容疑で緊急逮捕された。息子は病院に搬送された翌日に死亡した。女性は弁護人と相談し、取り調べに黙秘することを警察官に告げた。同7月、警察官が被疑者ノートの紙ひもが外れていることに気づき、留置場の外で修繕し、15~20分後に返した。

 判決は、そもそも修繕の必要性は高くなく、警察官がノートを15分にわたり女性の手元から離し、所在も明らかにしなかったのは、留置施設管理の事情を考慮しても許容される限度を超えていると指摘。立会人なしに弁護人と接見する権利(接見交通権)の侵害に当たると判断した。

 また、警察官にノートを閲覧されたのではと女性が危惧するのは当然で、「供述意思形成に対する萎縮効果は否定できない」として黙秘権の侵害も認めた。

 女性側は違法な取り調べがあったとも訴えていたが、警察官に黙秘権を侵害する言動はなく、その内容も「女性の人格を否定するものではない」として適法と判断した。

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