無罪判決後、日課の散歩に出て寺を参拝する袴田巌さん=2024年9月26日午後3時43分、浜松市天竜区、代表撮影

 三つの捏造(ねつぞう)がある――。事件発生から58年を経て袴田巌さん(88)を無罪とした26日の静岡地裁再審判決は、捜査機関による証拠捏造を認め、再審開始決定の判断よりもはるかに強く踏み込んだ。検察は判決をそのまま受け入れるのか。

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 判決が認定した捏造の一つは、再審公判でも最大の焦点だった「5点の衣類」だ。

 衣類については、一度再審開始決定を出した2014年の静岡地裁と、再審開始を決定づけた昨年の東京高裁も、捏造の可能性に言及。高裁は、衣類についた血痕に赤みが残る以上、袴田さんのものではないとして、弁護側の主張に軍配を上げていた。

 それでも検察側は再審公判で、弁護側の鑑定結果などに反論する法医学者ら7人の共同鑑定書を提出。検察側の専門家も法廷で「当時のタンク内の状況が分からない以上、赤みが残らないとは言えない」などと証言した。

 この日の判決は検察側、弁護側双方で計5人の専門家証人の尋問の結果を検討した上で、実際に衣類が見つかったタンクでみそ漬けした場合には「赤みを失う」と判断。衣類を袴田さんが隠した可能性は否定され、捜査機関の者が捏造したとしか想定できない、と結論づけた。

 この衣類のうちズボンをめぐ…

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