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福島地裁

 東京電力福島第一原発の処理水放出差し止めを求めて約360人が国と東電を訴えている訴訟で、裁判長の「ダブルブッキング」で20日の弁論が中止になった。裁判官の研修を忘れて日程を同日に入れるミスがあったといい、原告側は「裁判長のダブルブッキングなど聞いたことがない」と抗議している。

 原告側によると、今回の弁論予定は1月に設定され、4月1日付で川淵健司裁判長が福島地裁に着任する直前の進行協議で、当初から数日ずらして6月20日になった。この時、研修が見落とされたとみられ、二重で予定が入った。新旧どちらの裁判長のミスだったのかは不明だ。

 判明が直前で日程の再調整は難しく、弁論は次々回の審理が予定されていた10月1日にずれ込んだ。原告側は、研修より審理を優先するよう求めたが受け入れられなかった。

 この訴訟は、処理水放出で漁業被害や平穏生活権の侵害があったとして、漁業者や市民が放出差し止めを訴えている。原告は約360人で、裁判傍聴を呼びかけた支援者らも数百人にのぼる。国や東電の代理人なども東京などから出廷する。

 原告団の丹治杉江事務局長は「多くの人が迷惑するだけでなく、被害救済の訴訟で審理の先延ばしは許されない」と憤った。

 福島地裁総務課は「期日を変更したのは事実だが、それ以上の事項については回答を差し控える」として、審理より優先された研修の内容も明らかにしていない。

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