「とっくり王子」の野村健太さん=野村さん提供

 美濃焼の産地・岐阜県多治見市で、「とっくり王子」を名乗り、陶器ボトル(とっくり)の地位向上を目指して活動を続ける人がいる。きっかけは、会社員時代に目の当たりにした業界の厳しい現状だった。

 多治見市の野村健太さん(37)は、今年2月から「とっくり王子」として個人で起業し、新商品開発やとっくりのPR活動を行っている。

 野村さんは、2011年から12年間、焼酎などを入れる陶器ボトルを扱う多治見市の商社の営業職として、地元の陶器工場(窯元)や、全国各地の酒蔵を飛び回っていた。

 そこで感じたのは「単価の安さ」だ。

 陶器ボトル製造には10以上の工程があり、1カ月以上かけて作られる。職人たちの手仕事とその技に支えられているが、代表的な商品の出荷時の単価は400円以下のものが多いという。

 ボトルは、酒蔵から商社を介して窯元に製造の依頼があるのが一般的。「陶器ボトルは、お酒を入れる『備品』扱いで美濃焼の中でも価値が低くみられてしまう。価格の決定権も窯元に無い」と野村さん。単価の安さなどから人手不足にもつながり、「せめて単価が今の1.5倍ぐらいになれば人をもう一人雇える」といった嘆きをよく耳にした。陶器ボトルの製造会社も減るばかりだ。

 酒好きが高じて業界に飛び込んだ野村さんは、将来を案じ、「適正な単価で流通できるような仕組みに変えたい」と思うようになった。

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