日本銀行が発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業・製造業の景況感が1年ぶりに悪化した。背景にあるのは、中国経済などの減速懸念。そこに、トランプ米政権の関税政策が影を落とす。
不動産不況の中国からは、余った鋼材が世界中に安値で輸出され、2024年の日本への流入は23年より2割増えた。日本鉄鋼連盟の今井正会長(日本製鉄社長)は3月下旬の会見で、「国内のマーケットにも非常に大きな影響を及ぼしており、拡大していくリスクがある。深刻な状況だ」と危機感をあらわにした。
市況への下押し圧力の強まりが一因となり、今回の日銀の3月短観で鉄鋼の景況感は10ポイント悪化した。
世界経済の減速は、成長が期待される半導体にも及ぶ。AI(人工知能)の普及を受けて高性能な種類が好調な一方、自動車や産業機器用の半導体は苦戦する。
欧州や中国向けの低迷を受け、大手半導体メーカーのルネサスエレクトロニクスは、24年12月期決算が大幅な減収減益になり、24年に工場の稼働率を落とした。柴田英利社長は「どのくらいのペースで成長軌道に戻れるかはまだ見通しにくい」と話す。国内外で全従業員の5%未満(1千人規模)の人員を削減する方針も示した。
さらに今後、最大のリスクとなるのがトランプ政権の関税政策だ。
現状で企業の業績に大きな影…