体を目いっぱい使って、外野に抜けそうな打球を華麗(かれい)に処理する。
走者を送りたい場面では三塁線に絶妙なバント。小技だけかと思えば、150キロ超の速球を一振りで捉えるクリーンヒットもしばしば。
球界最小兵となる身長164センチの滝沢夏央(21)は、いまや「2番・二塁」として、埼玉西武ライオンズに、攻守で欠かせない存在となっている。
ただ、彼がファンをひきつけているのはプレーだけではない。
行動から人柄の良さが伝わってくるのだ。
- 西武を引き締める背番号91 鳥越コーチがみたベテランの良い変化は
6月11日の阪神戦。チームは劇的な逆転サヨナラ勝ちを飾った。
喜びのあまりチームメートがグラウンドに投げ捨てたペットボトルを、滝沢はさりげなく回収していた。
「自然と、ですね。誰かが拾わないといけないので自分が拾います」
この日だけでなく、試合後にベンチに残ったペットボトルを集める姿がたびたび中継映像に映っている。
6月13日の中日戦では、相手の金丸夢斗にデッドボールを当てられた。その直後、申し訳なさそうな表情の新人左腕に対し、滝沢の方からお辞儀をした。
「(死球に)ビックリしてあまり自分の行動を覚えてないですけど、『全然大丈夫です』っていう意味だったと思います」
高校時代の恩師、新潟・関根学園高の安川巧塁(よしたか)監督(33)の見解はこうだ。
「避けられる球だったのに自分が避けきれなくて申し訳ない、と本人は思ったのでは」
安川監督がそう考えるのは、高校3年間の滝沢を見て、「偉ぶることなく、人が嫌がることを率先してやる」性格をよく知っているからだ。
身体能力が図抜けていた滝沢…