老人ホームと紹介業者との契約書。入所者の要介護度や医療の程度に応じた紹介料の値段が記されている

 高齢者らが老人ホームなどの高齢者施設に入る際、施設を紹介する業者が介在し、施設側から業者に高額の「紹介手数料」が支払われるケースが相次いでいる。要介護度が高く、施設が多く報酬を得られる入所者ほど、紹介料を高額にするビジネスが横行している。

 厚生労働省は、要介護度にひもづいた料金設定は不適切として、紹介料に関し施設を指導するよう求める通知を昨年12月、自治体に出した。紹介業者は指導対象ではない。

 高齢者施設は、入所者の要介護度に応じて介護報酬を得られる。施設運営会社が訪問看護事業所も経営していることがあり、入所者への訪問看護で診療報酬も入ることになる。

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 朝日新聞は、老人ホーム側と紹介業者が結んだ複数の契約書を入手した。業者側が入所者をホームに紹介する「手数料」が記されている。要介護度が上がって介護報酬が高くなるのに従い、紹介料が上がる仕組みになっていた。

 関西のあるホームの契約書では、要介護度1の入所者の紹介料は30万円で、同5は50万円。さらに1日3回の訪問看護を受ける場合、要介護度1が70万円、同5が100万円になっている。このホームの運営会社は訪問看護事業所も経営している。症状ごとに高齢者に「値段」が付けられている形だ。

 紹介業者が手数料を取るのは入所者や家族からではなく、ほとんどが施設側からだが、入所者側には知らされずに金銭授受が行われているケースが多くある。紹介料の高さが優先され、入所者が希望の施設に入れない事態が起きている。

 病院にいる高齢者の場合、入院が一定期間を過ぎると診療報酬が減るため、長期入院の高齢者は採算が悪いとされ、退院になることが多い。老人ホーム側は高い介護・診療報酬を得られる入所者を求める。病院とホームそれぞれの事情の間に紹介業者が介在し、紹介料の高騰が起きている。

 全国有料老人ホーム協会など…

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