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外国籍の高校生向けのプレスクールや日本語教室で教える高橋清樹さん=2025年4月26日午前10時26分、川崎市、山本知佳撮影

 季節はずれの雪が降り続いていた3月下旬、春休みの神奈川県立川崎高校は、灰色の空の下でしんと静まり返っていた。

 1階のひとつの教室だけ、こうこうと明かりがついてた。

 教室には机を向かい合わせにした島が、二つ。10代の子どもたち20人ほどが座っている。

 「学校が始まる時間、何時?」。前方のモニターに質問が映し出された。

 「8時50分!」「9時!」

 数人が元気よく答えた。子どもたちは、ネパールや中国の出身だ。

 前に立った高橋清樹さん(70)は元高校の教員。答えにうなずくと続けた。「じゃあ、学校が始まる時間って?授業が始まる時間?それとも校門に入る時間?」

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パソコンを使って日本語で自己紹介用のスライドを作る外国籍の生徒たち=2025年3月28日午後1時59分、川崎市、山本知佳撮影

 とたんに、教室じゅうに日本語や英語、ネパール語や中国語が飛び交った。高橋さんの問いを、そばに立つ支援員たちが子どもたちの母語に翻訳したからだ。口々に、いろんな言語で答える声が上がり、にぎやかに「授業」が進んでいく。

 県立高校に入学を控えた外国籍の子どものための10日間の「プレスクール」だ。日本の高校の仕組みや日本語を入学前に無料で学べる。

 この日は、高校で習う教科や、卒業に必要な単位数などの説明を受けた。別の日には、模擬授業や、外国籍の「先輩」在校生から経験談を聞く場面もあった。

 神奈川県教育委員会の委託を受けて、NPO法人「多文化共生教育ネットワークかながわ(ME-net)」が4年前から行っている。今年は、午前と午後で計約40人が参加した。中には三浦半島から1時間以上かけて通う子もいた。

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高校生向けのプレスクールや日本語教室で、外国籍の生徒に教えている高橋清樹さん(右)=2025年4月26日、川崎市、山本知佳撮影

 ME-netは法人化する前…

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