今や日本経済の牽引(けんいん)役となっている訪日外国人客(インバウンド)。中でも急増しているのがタイ人観光客だ。近年、来日数が10倍近くに増え、リピート率が高く、東京よりも地方を好む傾向があるという。彼らが日本旅行に求めるものとは?
首都バンコクの巨大なショッピングモール。2月上旬、地上階の全面を使って「ジャパンEXPO」が開かれた。主催者発表で3日間の来場者が70万人という「アジア最大級の日本イベント」。日本人アーティストによる多数のコンサートのほか、日本食や日本の商品の販売、観光企業や各都道府県の出展が並んだ。
青森県のブースでは、県誘客交流課の磯辺猛さんに、税理士のモンラパット・ナイヤナノントさん(49)が尋ねていた。「ここに行きたい。どうやったら行けますか」
見せた写真は下北半島の秘境・仏ケ浦の奇岩群。「日本には4回行った。去年は青森でねぶたを展示する施設を訪れた。今度は本物のねぶた祭りを見たい。そのついでにこの写真の場所に行こうと思った」という。
スマホには日本で撮った無数の写真を保存している。上高地、白馬岳、茨城県のネモフィラ畑、佐賀県の祐徳稲荷神社……。この神社はタイ映画やドラマでロケ地に使われ、タイ人に人気がある。「韓国と中国にも1回ずつ行ったが、やはり日本は自然と人がすばらしい」と話す。
タイの旅行会社のブースには日本ツアーのチラシが張り出されていた。だいたい3万~5万バーツ(約13万~21万円)の価格帯だ。
案内役のデディさん(44)は「ツアーで人気なのは、冬なら北海道、春なら桜。定番は東京と富士山。新宿や渋谷、アウトレットモールでショッピングの自由時間は欠かせない。日本は大人気だけど、去年から中国がタイ人を対象にビザ免除を始め、ライバルになっている」と話す。
タイ人が行ったことのない場所へ
コスプレ姿の若者も会場に多…