記者解説 経済部・中川透
銀行振り込みや株式投資などをめぐる金融トラブルに巻き込まれる人が目立つ。なかでも、お金をだましとられる詐欺の被害が増えている。警察官を装う、老後不安につけこむ、恋愛感情をもてあそぶなど、手口は様々だ。
警察庁や法務省の統計によると、お金以外の物品も含めた詐欺被害額全体は2024年に3075億円と前年の2倍近い。窃盗なども含めた財産犯全体では4千億円超と、平成以降の30年余りで最も多い02年を上回る。極めて憂慮すべき状況だと政府も認める。
とりわけオレオレ詐欺など「特殊詐欺」が収まる気配がなく、被害額は25年1~6月に597億円と前年同期の2.6倍に増えた。
私たちはどう対応すべきなのか。ここで筆者(52)の家族が振り込め詐欺の被害に遭った体験を伝えたい。
首都圏で一人暮らしの父(83)が昨年末、自宅の固定電話にかけてきた相手を刑事だと信じ込まされ、捜査協力の名目で振り込みを指示された。約1カ月で蓄えの9割を失った。
地元の警察へ被害を伝え、銀行の支店を父とともに訪れた。応対した行員は、被害の聞き取りもそこそこに、関東の別の県にある警察署へ電話するように言った。
自宅へ戻り連絡すると、父は電話口の本物の警察官から告げられた。「うちの署にはあなたの口座へ振り込んだ被害者が相談に来ている。口座が犯罪に使われ、あなたは加担したことになる」。父のネットバンキング口座が犯罪者に乗っ取られ、別の被害者からの振込先に悪用されていたのだ。
ポイント
投資ブームのなか金融トラブルが目立つ。昨年の詐欺被害は前年から倍増した。人工知能(AI)の悪用など手口が巧妙化。企業と関係省庁が連携して対応すべきだ。被害の十分な回復は難しい。消費者は身を守る意識を高めて、不安を感じたら相談を。
筆者自身が便利に使っている…