(24日、第107回全国高校野球選手権大分大会 柳ケ浦1―2大分舞鶴)
同点で迎えた五回裏2死一、二塁のピンチ――。柳ケ浦のエース・杉本羽輝(つばさ)投手(3年)は、1球投げるたびに肩で大きく息をした。
試合前日、鈴木聡監督から先発を告げられた。「自分を信じて投げれば絶対に打たれないから」と言われた。だが、不安もあった。
以前から「安定感がないのが自分の一番ダメなところ」という自覚はあった。そのための準備もしてきた。安定感が増すよう下半身の強化や体幹を鍛え上げると、5月ごろから制球がよくなり今大会を迎えた。
それでも準々決勝までの2試合で15回を投げ、10個の四球を出していた。安定しているとは言えなかったが、この日は「初回からいい入りができた」。真子陽登捕手も同様に感じ取っていた。
ただ、試合が進むと制球に乱れが生じ始める。ボールが先行しだした三回には同点とされた。弱気になってしまう杉本投手に、真子捕手は「気持ちで向かってこい」と檄(げき)を飛ばし続けた。だが、五回のピンチは防ぎきれず、勝ち越しを許した。
練習やブルペンでは調子がよくても、試合でボールが荒れてしまうという欠点は、そのまま試合の負けにもつながる厳しいものと知った。大学に進学しても野球を続ける。「そこを考えて、これからを過ごしていきたい」。最後の夏を終え、先を見据えた。