内部告発したことを理由に勤務先の専門学校を懲戒解雇されたのは不当だとして、札幌市の男性(45)が30日、教員としての地位保全などを学校側に求める仮処分を札幌地裁に申し立てた。男性は1月に「幼稚園教諭免許取得に関わるテストで持ち込んだ資料の丸写しを認める不正があった」と一部の報道機関に告発していた。
男性は申し立て後に会見を開き、「(告発した内容が公益通報者保護法の)対象外と知ってがくぜんとした」と話した。学校を運営する学校法人は「事実確認がとれていないのでコメントは差し控える」とした。
申立書などによると、問題があったとされるのは幼稚園教諭2種免許の取得に必要な単位の認定テスト。男性はこの学校では以前から模範解答付きの冊子を持ち込め、丸写しすればテストで得点できる状態が続いていたと主張する。
男性は学校側に改善を求めたがかなわなかったため、報道機関に内部資料を提供。地元メディアが男性の告発内容を報道した。
文部科学省も調査に乗り出し、系列短大の一部教員が冊子の模範解答を書き写せば正答となるテストを作っていたと認定。学校法人に3月、是正するよう口頭で指導した。
ただ、そうした問題はテストの一部に限られ、赤点を回避できるほどではなかったほか、授業で達成度合いの評価も行われていたと判断。単位を認定したことに法令違反はないと結論付けた。学校側はホームページで、文部科学省に「成績・評価・単位付与に影響を及ぼすものではないことを確認」し、「科目修得試験の設問、運営方法を改善」したと説明している。
学校側は男性が無断で内部資料を流出させたなどとして4月に男性に自宅待機を命じ、翌5月に懲戒解雇とした。
申立書で、男性は「告発には資料が不可欠で、報道機関にはプライバシー配慮を求めた。内部で問題提起を繰り返し、道にも通報したが改善せず、報道機関に訴えるほかなかった」と主張している。
男性は「勉強せずに単位が取れるとなれば、頑張れる学生も勉強せず、幼児教育の現場に影響が出る」と話す。
内部告発をした人を守る公益通報者保護法は、勤務先で不正を通報した人を保護する法律。2006年、自動車メーカーのリコール隠しや食品メーカーの食品偽装をきっかけに施行された。
ただ、全ての法令違反を公益通報の対象とはしていない。
対象は横領やデータ改ざんと…