メディア空間考 松浦祐子
「なぜ、報道で『患者』という言葉にすり替えられたのでしょうか」。先日開かれた認知症に関するパネルディスカッションで、登壇者から問題提起があった。昨年12月に閣議決定された認知症施策推進基本計画に関する報道で、同計画で「認知症の人」と記されているにもかかわらず、「認知症患者」と表現するケースがあったという。これに対して認知症の人からは「普段の暮らしの中では患者という感覚はない」「患者と呼ばれることで、医療や介護が生活のすべてだと捉えられてしまう」といった意見が出た。
朝日新聞のデータベースを調べてみた。今回の計画に関する記事ではなかったが、認知症の人を患者と表現している記事が散見された。医療に関する内容で、患者と表現するのが妥当だと思われるものがある一方で、認知症の啓発イベントなどに関する記事では、あえて患者と記す必要性がなさそうだなと思うものもあった。
言葉は時に、先入観をあらわ…