埼玉県坂戸市教育委員会が今月、市立中学校の生徒全員に国語辞典を配布した。授業で活用し語彙(ごい)力アップや学習意欲の向上をめざしており、現場の教諭たちからも期待の声が上がる。
「中学校3年間で辞書をいっぱい使い、いろんな言葉を調べてほしい」
4日、市立浅羽野中1年生の国語の授業。五十嵐晴彦教諭は、生徒たちにそう語りかけ、辞書を渡した。
「言葉の数をいっぱい知っていることを『語彙力』といいます。語彙力のある人はしゃべるのが上手になるし、説明する力がつきます」
生徒たちには、愛着を感じてもらえるように、自分の名前を書いてもらった。「国語」「感謝」などの言葉を引かせ、辞書を使って探す楽しさを確認した。
市教委は今月、市立中の生徒全員(7校、約2460人)に「例解新国語辞典」(三省堂)を配布した。各校の国語教諭らが選定した1冊で、カラー刷り、約6万語が収録されている。
狙いは教育効果だ。市教委の担当者は「タブレット端末に比べ、紙の方が記憶に残るという調査もある。調べる時に周りの言葉も目にするので言葉に興味を持つ」と説明する。
授業後、子どもたちからも前向きな感想が相次いだ。「新しい辞書だと気持ちもワクワクするので、言葉を引いてみたくなる」「一発で(めざす言葉を)引けないから、いろんな言葉に目がいきました」
今後、授業中に机の上に置いてもらい、全教科での活用をめざす。現場の教諭らからも「実際に語彙力の低下、活字離れを感じていたので、言葉の世界が広がってほしい」と期待の声が上がる。「欲を言えば、全体的な学力も上がってくれれば……」