Smiley face

 トランプ米大統領が2期目の実質的な初外遊先に選んだ、中東への歴訪を終えた。2兆ドル(約290兆円)という巨額の経済取引を取り付け、対外貿易の強化と雇用創出に重点が置かれたが、それ以外でもトランプ氏の外交姿勢が垣間見えた。

四つのポイント

①称賛の見返りに対米投資 人権・民主主義は語らず

②強い男が好き 「ブロマンス外交」

③公私混同さらに拡大? ジェット機贈与案に波紋

④地域の最重要課題、進展には疑問符

写真・図版
湾岸諸国の首脳らとの会合であいさつするトランプ米大統領=2025年5月14日、リヤド、下司佳代子撮影

①称賛の見返りに対米投資 人権・民主主義は語らず

 最初の訪問地、サウジアラビアであった投資イベント。大きなシャンデリアが輝く大催事場を埋めた王族ら聴衆が喝采を送った場面の一つが、トランプ氏が「西側の介入主義者」が「生き方や統治について説教」してきたことを非難し、地域の人々自ら「伝統と遺産」を重視することで繁栄したと称賛した時だった。

 「現代の中東は、独自のビジョンを追求し、自らの運命を自らの方法で切り開いてきたこの地域の人々によって生まれたものだ」

 これまでの米国は、自由や人権、民主主義の擁護者としてその基本的価値を世界に広めようとしてきた。バイデン前大統領は、反体制派を弾圧し、ときに市民の言論を封殺してきたサウジの人権状況を問題視。政権に批判的だったジャマル・カショギ記者の殺害についても、関与を疑われたムハンマド皇太子と協議した、と主張していた。

 一方のトランプ氏は、「これまで多くの米国大統領が、米国の政策を用いて外国の指導者の罪に対し正義を下すことが我々の仕事だという考え方にとらわれてきた」と述べ、上から目線で偽善的とも受け止められた従来の米外交の「弱点」を突いた。

 相手国がどんな状況であれ、自らに有利な経済取引を引き出すために良好な関係を築くことを重視し、人権や価値観は語らず、相手を称賛する――。こうした姿勢を訪問先の3カ国は熱烈に歓迎。到着・出発時に大統領専用機の護衛に戦闘機を派遣し、巨額の対米投資を約束して応えた。

写真・図版
2025年5月14日、サウジアラビアからカタールの首都ドーハに向かうトランプ米大統領を乗せた専用機には、カタールの戦闘機が護衛についた=ロイター

②強い男が好き 「ブロマンス外交」

 1期目に続き、サウジのムハ…

共有