生活資金について根岸なつきさん(右)と話す2人=2024年10月15日午後7時39分、東京都葛飾区東堀切1丁目、寺島笑花撮影

 笑顔が愛らしい女性(29)と穏やかな男性(29)。2人が付き合い始めたのは、5年ほど前だった。

 「おいしそうにご飯を食べるのがいい」。男性が言うと、女性は「恥ずかしいな」と照れ笑いした。

 2人には軽度の知的障害がある。出会いは東京都葛飾区にある宿泊型自立訓練施設。施設を出た後、LINEのやりとりが始まり、一人暮らしをしていた男性と、グループホーム(GH)で生活していた女性は、1年前から同居を始めた。

 この施設やGHを運営する社会福祉法人「原町成年寮」は、利用者の恋愛の支援を続けている。2人の場合、法人の職員で社会福祉士の根岸なつきさん(48)が交際当初から見守ってきた。同居を始めた時は、保護者への説明の場を取り持った。

 共に障害者雇用で一般企業で働いており、法人が財産管理を請け負い、家事が負担にならないよう弁当の宅配の契約も手伝った。

 2人は、年明けには結婚し、将来は子どもを持つことも考えている。

 法人では、1986年以降、利用者同士の約60組の結婚を支援してきた。寮では月に1度、性に関する教育もしている。

 自分や相手の気持ちを理解し、思いを伝える実践のほか、性交や避妊については利用者それぞれの事情に応じて個別に教えているという。根岸さんは「恋愛や結婚に関わらず、生活支援にあたって、性の学びは当然必要」と語る。

 知的障害などがある人が、自分の生き方を自ら決める「意思決定」を尊重する考え方が広がっている。国は今年6月、結婚や子育てを支援するよう自治体に通知を出した。一方、生き方と密接に関わる当事者の性について語ったり、相談したりする場は広がっていない。当事者や保護者は何に悩み、どんな支援が必要なのか。現場を取材した。

人を好きになること、「大事な生き方」

 障害がある人が、自分の人生を自ら決める意思決定支援の考え方が広がりつつある一方で、恋愛や結婚を前提とした学びの場はいまも少ない。

 知的障害のある青年らが通う…

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