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患者の語りを医学生らが聴く活動を続ける西岡龍一朗さん=本人提供

 富山大医学部6年の西岡龍一朗さん(33)は、がんなど病の経験者の語りを、医学生らが聴く活動を続けてきました。原点は、「患者と医師との信頼関係」についてのある患者の言葉でした。

富山大医学部6年 西岡龍一朗さん

 オンラインや対面で、がんなどの病を経験した方に語っていただく活動「Medipathy(メディパシー)」を、これまで約70回開催しました。語り手は100人以上で約7割はがんの方でした。聴く側の参加者は延べ800人以上。多くは医学生です。

 Medipathyは造語で、医療を意味するMediと、患者(patient)、共感(empathy)、思いやり(compassion)を合わせました。

 始めたのは2020年6月。その少し前、子どもを持つがん患者の集まり、一般社団法人「キャンサーペアレンツ」の西口洋平代表(同年5月に死去)と話す機会がありました。胆管がんで容体が悪化するなか、「いろいろな治療を経て、もう難しいという状況になってきたけれど、振り返ると医療者、特に医師との信頼関係はとても大切だった」と話していました。

 医学部では知識を学ぶけれど、患者さんとの信頼関係の作り方は教えてくれない。まずは患者さんの話を聴くところからと思い、知り合いの乳がんの女性に頼んでオンラインで語ってもらったのが最初です。

 講義では学べない複雑な気持ちを知り、医学生として医師になろうという情熱や覚悟を得られる、日々の勉強にも意欲がわくと感じました。社会人を経て医学部に入り直した私にも、心構えについて考えさせられる大切な学びの時間になりました。表現が難しいですが、つらい、そして深い体験を知ることができる楽しさ、ありがたさも大事にしています。

 語り手が「話すことで役に立…

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