大川原化工機の社長ら3人を逮捕・起訴した捜査をめぐり、一審判決に続いて、都(警視庁)と国(東京地検)に賠償を命じた東京高裁の太田晃詳(てるよし)裁判長は現在64歳で、今年10月に定年退官を迎える。
大阪高裁部総括判事や千葉家裁所長を経て、東京高裁には2024年5月に着任した。
太田氏の名前が注目されたのは22年。障害がある人らに強制的な不妊手術を認めた「旧優生保護法」をめぐる訴訟で、大阪高裁の裁判長として判決を言い渡したときだ。
同種訴訟は全国12地裁・支部で起こされた。だが、被害者らが手術をされたのが50年以上前のケースもあり、「損害賠償を求める権利は失われた」として原告側がことごとく敗訴していた。
しかし太田氏は22年2月、強制不妊手術を推し進めてきた国が、時間の経過によって責任を免れるのは「著しく正義・公平の理念に反する」と判断。賠償請求権の消滅を認めず、一連の訴訟で初めて、国側に賠償を命じる判決を出した。
あるベテラン裁判官は「あの判決がその後の訴訟の流れを変えた。大きな意義があった」。この判決の後、国に賠償を命じる判決が各高裁で相次ぎ、最高裁大法廷も24年、国に賠償を命じる判断を踏襲した。
大阪高裁の裁判長時代にはほかに、「一票の格差」が最大2.08倍となった21年衆院選を「違憲状態」だとする判決も22年に言い渡している。
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