千葉県警八千代警察署の3階には警察官が日々、柔道や剣道で鍛錬する道場がある。そこが週に1回、にぎやかになる。チビッ子柔道クラブの日だ。初心者から経験者まで、八千代市内の小中学生が柔道に親しみ、汗を流す。
24年前、この道場で「マット運動のような感じ」で柔道を始めた女の子が、パリ五輪の畳に立つ。
角田夏実選手(31)=SBC湘南美容クリニック。昨年5月にあった柔道の世界選手権女子48キロ級で、初戦からすべて一本勝ちで優勝。五輪代表の切符も初めて手にした。
世界王者は子どものころ、泣き虫だった。小学2年の時、精神的に強くなるように、親子で一緒に何かに取り組もうかと、接骨院を営んでいた柔道経験者の父親・佳之さん(60)と柔道クラブに通い始めた。自分より大きい子に負けては泣いた。試合中から泣いた。勝っても泣いた。でも、やめるとは言い出さなかった。「根が負けず嫌いだったんでしょうね」と佳之さん。
中学生のころは部活だけでなく、接骨院に畳4枚を入れ、親子で「口げんかをしながら」練習した。進学した八千代高校では柔道漬けの日々。練習が終わって帰宅した後も市内をランニングした。夜なので、両親が交代で付き添った。親の方は一緒に走ってヘロヘロになったり、おしゃべりしながら自転車で伴走したり。
父から教わったともえ投げが得意技
高校総体では2年の時に全国…