青森県警の男性警部(当時55)が2016年に自ら命を絶ったのは職場でのパワーハラスメントや長時間勤務が原因だとして、妻(60)が公務災害(労災)認定を求めた訴訟。一審では「公務が原因ではない」という判決が出たが、控訴審で新たな証人が証言台に立つことになった。
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証人は警部の元同僚。一審での遺族敗訴を知り「先輩の無念を晴らしたい。自分が見聞きした、ありのまますべてを話す」と、警察組織のしがらみを振り切って出廷を決めた。
9月8日に仙台高裁で始まる控訴審で、原告側の証人として法廷に立つのは、警部の同僚だった男性(61)だ。今年3月に県警を退職している。
声を荒らげ、書類を投げつけた上司
男性は警部とは新人のころからの付き合いで、共に交通分野の業務に長く携わってきた。夜間や休日の当直を一緒に務めたこともある。警部は男性にとって、警察官として憧れの存在だったという。
「交通事故が起きたら、とにかく『現場さ、行け』って。『証拠は現場にある。真実は一つだ』と言って、何度も何度も足を運んでいた。交通警察のかがみのような素晴らしい警察官だった」
警部が自ら命を絶った16年7月は、県警本部内の隣り合う部署で仕事をしていた。亡くなったとの知らせを受けた時は、真っ先にパワハラを疑った。警部が上司から叱責(しっせき)を受ける様子を複数回目撃していて、男性自身も同じ上司から理不尽だと感じる指導を受けたことがあるからだ。
男性によると、上司は他の職員が見ている前で「何回言ったらわかるんだ」「(書類の文章が)前のと変わっていないじゃないか」などと声を荒らげ、書類を投げつけることもあったという。
警部の自死後、妻は地方公務員災害補償基金青森県支部を相手取り、公務災害の認定を求めて提訴に踏み切った。男性は県警に対し、警部が上司のパワハラによって亡くなった可能性を何度も訴え、「遺族から『話を聞きたい』という要請があれば証言する」と伝えていた。
遺族に、男性に、県警が伝えた矛盾
しかし、遺族によると、県警…