世界陸上連盟(WA)は2022年7月14日、米オレゴン州であった理事会で25年世界選手権の東京開催を決めた。
その時、東京は15日未明。夜を徹してパソコンで結果を確認した東京都の担当者は、胸をなで下ろした。世界陸上を担当するため、7月に異動してきたばかりだった。
約1カ月後の8月17日、東京五輪パラリンピック組織委員会を巡る汚職疑惑で、東京地検特捜部は組織委元理事らを逮捕した。
「これは……」
都の担当者は先行きが不透明になったと、感じたという。
21年に開催した東京五輪パラリンピックの経費として、東京都は5965億円を負担した。さらに関連経費として既存施設のバリアフリー化などに7049億円も計上していた。
巨額の税金が投じられた大会で、大会協賛に関する贈収賄に加え、運営業者選定を巡る談合による逮捕者も出た。
スポーツ大会に税金を投入することに、国民から厳しい目が向けられるようになった。
都が日本陸上連盟から世界陸上開催への支援要請を受けたのは、大会招致が決定する前の22年5月。都によると、「200以上の国と地域から2千人以上が参加する世界最高峰の陸上大会。東京で開催することでスポーツの発展だけでなく、社会経済の活性化など多くの意義を有している」として支援を決めたという。
今大会の当初予算は150億円(8月に174億円に修正)。チケット販売や協賛金収入で60億円(同84億円に修正)を賄い、残りは日本陸連が10億円、国が20億円、そして都は60億円を負担することが決まっている。
東京五輪の約百分の一。今年11月に都内で開かれるデフリンピックの支援額約100億円よりも少ない。
担当者は「大会への子ども(の参画)や環境への取り組み、東京の魅力を大会を通じて国際的に発信すること(の価値)を総合的に勘案した」と言う。60億円の算出に明確な基準や指標はなく、大会を運営する世界陸上財団からの要請額を妥当だと判断したという。
07年の世界陸上大阪大会で、約100億円の経費のうち、約4割の40億円を大阪市が負担したことも目安にはなったという。
ただ、契約や経費のチェックは過去に例がないほど厳格に行っている。
「そこは、東京五輪の経験をふまえている」と担当者は言う。
なぜ今、東京で世界陸上
陸上の世界選手権東京大会が13日、東京・国立競技場で開幕します。2021年の東京五輪・パラリンピック以来、初めて東京で開かれる大規模な国際大会。新型コロナウイルスや汚職・談合に翻弄された大会から4年、「遺産」はどう生かされるのでしょうか。
五輪汚職を受け、都は23年…