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財務省の庁舎の周りを歩くデモの参加者が掲げたプラカード=2025年3月14日午後4時58分、東京・霞が関、関田航撮影

記者コラム 「多事奏論」 編集委員・原真人

 3月中旬の夕刻、東京・霞が関の財務省前を訪れると、「消費税廃止」などと書かれたプラカードを掲げる人々が数多く集まっていた。全国各地で散発的に開かれる「財務省解体デモ」だ。

 近くでは保守系団体や千葉県知事選の候補者まで何かを訴えている。「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏が暴漢に襲われると、あたりは一時騒然とした。デモ映像をSNSで流すユーチューバーらも含め総勢千人ほどと見られる人たちが暗くなるまで財務省を囲んだ。

 13年前に官邸前でおこなわれた数万人規模の脱原発デモと、今回のデモは何が違うのだろうか。当時は政府や電力会社の不作為への国民の怒りが政策の変化を望む声に結集した。だが、今回のデモからは、そのように一つに立ち上るようなエネルギーは感じられなかった。

 たしかに人々には物価高への怒り、将来不安が高まっている。財政政策への不信もあるだろう。ただ、このデモに渦巻いていたのは何より、不満を何かにぶつけたい、激しくなじりたい、留飲を下げたいという欲求ではなかったか。それが「敵は財務省」で一時的に同居しているのだと私には思えた。

 きっかけの一つは国民民主党が求めた「103万円の壁」問題だった。提案が財源でつまずくと「抵抗した財務省は解体すべきだ」という声が広がった。

 それは、見当違いの主張だと…

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