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山林火災による避難指示の解除後、塩蔵ワカメの作業が急ピッチで進められた=2025年3月15日、岩手県大船渡市、伊藤恵里奈撮影
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 山林火災で被災した岩手県大船渡市綾里(りょうり)の塩蔵ワカメやメカブが19日、東京・高円寺のイベント「座の市」で販売される。東日本大震災後から綾里の漁師と交流を続ける市民グループ「綾里のわかめ屋さん」の企画だ。

綾里のファンたちが企画 震災後から続く交流

 座の市は、毎月第3土曜に杉並区の劇場「座・高円寺」前の広場で開かれる地域密着型の食のイベント。「わかめ屋さん」は10年にわたり毎月、出店し、綾里の海産物を販売してきた。

 その中心は、中野区の会社員、奥野誠司さん(49)と妻の真美さん(54)ら東京近郊の有志約10人。大震災後に漁協と連携して発刊された、食べ物付き情報誌「綾里漁協食べる通信」(現在は休刊)の読者だった人たちだ。誠司さんは「メンバー全員が綾里のファン」と言い、綾里の漁師や漁協女性部を「座の市」に招き、消費者とじかに触れ合う場も設けたことがあるという。

ワカメの収穫が遅れ、漁具も焼失

 綾里は全国有数の良質なワカメの産地。日持ちがよくなるよう塩蔵したワカメは、漁師たちの年収の多くを占める。だが、今年は火災の影響で収穫が遅れたうえ、自宅が被災したり塩蔵に必要な道具を失ったりした漁師もいた。

 メンバーと長年の付き合いがある漁師の三浦秀悦さん(65)も、ワカメ漁に必要な道具の大半を焼失した。だが、メンバーやボランティアの力を借りるなどして、塩蔵作業をすることができた。三浦さんは「今年も高円寺に届けられてよかった」と喜ぶ。

支え合いを考えるきっかけに

 4月の座の市は19日午前11時~午後5時(売り切れ次第終了)。「わかめ屋さん」は、5月以降も、綾里の海産物を販売する。奥野誠司さんは「ワカメが出荷できない事態になったかもしれない今回の火災を通じて、防災対策の見直しや、困ったときの支え合いを考えるきっかけになれば」と語る。

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